akane
2019/01/14
akane
2019/01/14
Genre: Rock
Born to Run – Bruce Springsteen (1975) Columbia, US
(RS 18 / NME 85) 483 + 416 = 899
Tracks:
M1: Thunder Road, M2: Tenth Avenue Freeze-Out, M3: Night, M4: Backstreets, M5: Born to Run, M6: She’s the One, M7: Meeting Across the River, M8: Jungleland
もし明日宇宙人が地球にやって来て「ロックンロールとはどんなものか?」とあなたに聞いたならば、エルヴィス・プレスリーのデビュー作(56年)と、本作のタイトル曲を聴かせればいい。これがわからなければ、ロックはわからない。
「明日なき暴走」との邦題を与えられたこのナンバーは、たとえばコンサートでは、冒頭2秒のドラムロールの瞬間に観客の涙腺が決壊する。続く、分厚いサキソフォンにバッキングされたギター・リフ、ここで雄叫びだ。でかいでかい、鳴り止まぬ地響きみたいな大音声と、「ボス」のファースト・バースが正面衝突する……。
本作は、ブルース・スプリングスティーンの一大出世作にして、70年代後半以降のアメリカン・ロック、そのメインストリームの方向性を決定づけた、まさに金字塔と呼ぶべき1枚だ。ここまでのスプリングスティーンは、レコードが売れなかった。ボブ・ディランの系譜を継ぐ都会の詩人(という見方も、間違ってはいないのだが)として売り出されたために、デビュー作以来、どうもレコードでは本領を発揮できない、そんなきらいがあった。その逆に、盟友のEストリート・バンドを従えて繰り広げられる、灼熱のステージの評判は、年々高まるばかりだった。
そんな彼が、「ついに」ライヴの強みをレコーディング・スタジオで再現することに成功し始めたのが、通算3枚目のアルバムとなる本作だった。邦題で並べてみよう。「涙のサンダーロード」「凍てついた十番街」「夜に叫ぶ」「裏通り」――ここまでが、アナログ盤のA面だ。そしてあなたは、LPを裏返す。針を落とす。そしてドラムロール、「明日なき暴走」だ! 「彼女でなけりゃ」「ミーティング・アクロス・ザ・リバー」、そして「ジャングルランド」も入っている……本作は、スプリングスティーン初の全米トップ10入り、最高位3位を記録した。
スプリングスティーンが指向した方向性の、ほとんどのところが本作では見事に成果を出していた。たとえばそれは、50年代のエルヴィスのマンブリング(口のなかでもぐもぐ言うような歌いかた)、ロイ・オービソンの朗々と伸びる声、60年代以降のフィル・スペクターの「音の壁」、デュアン・エディの甘くもワルいギター・サウンド、そして「ディランが具象派の短篇小説家になったような」詞の世界――これらをすべて合わせ持った、きらめくようなロックンロールだった。
次回は25位。乞うご期待!
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
この100枚がなぜ「究極」なのか? こちらをどうぞ
Twitterはこちら@dsk_kawasaki
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.