「無辺のなかの究極、100の珠玉」【第1回】著:川崎大助
川崎大助『究極の洋楽名盤ROCK100』

戦後文化の中心にあり、ある意味で時代の変革をも導いた米英のロックミュージック。現在我々が享受する文化のほとんどが、その影響下にあるといっても過言ではない。つまり、その代表作を知らずして、現在の文化の深層はわからないのだ。今を生きる我々にとっての基礎教養とも言えるロック名盤を、作家・川崎大助が全く新しい切り口で紹介・解説する。

 

「究極の100枚」をこれからご紹介しよう。日本においては「洋楽」と総称されることが多い、米英のロック音楽、そのアルバムのベスト・オブ・ベストだ。これまでに世にあった、日本語世界の「洋楽ロック名盤リスト」はすべて忘れていい。ここにあるセレクションと序列こそが、今後のスタンダードとなるからだ。

 

あなたがほんのすこしでもロックに興味があるならば、最初に聴いてみるべき1枚は、間違いなくこの「100枚」のなかにある。逆にあなたがロック通を自認していて、なおかつこの「100枚」のうちに1枚でも聞き漏らしがあったなら――正直言って、それはちょっと「まずい」かもしれない。だから、そんなかたのアンチョコ、あるいは虎の巻としても、このリストは効果的に機能するだろう。

 

さてところで、僕がこの「100枚」を究極と呼ぶ理由は、こうだ。この名盤リストのセレクションおよび順位は、考えうるかぎり科学的かつ合理的に決定された。ゆえに「究極」だと考える。

 

では具体的にどうやって作成したのか?というと、アメリカ、そしてイギリスにおける「最強の名盤リスト」を素材として、それらの順位から数学的に序列を導き出すことを僕は考えついた。そして、それを実行した。

 

ちなみに、このような計算にもとづいたリストが公表されることは、僕が知るかぎり、国際的に見ても前例はないはずだ。すなわち僕は、世界で初めて「この方法論で」名盤リストを編んでしまった、のかもしれない。その成果を、まさにいま、あなたは目撃しようとしている。

 

このリストの成り立ちについて説明しよう。米英のロック音楽について考察するとき、貴重な情報や傾聴すべき見解を最も豊富に蓄積しているのが、「米英本国の聴き巧者たち」だということは論をまたない。そんな人たちが選んだリストがある。つまり、かの地の批評家や愛好家、または音楽の現業に就く人々のなかでも一流中の一流が、まさに喧々囂々、丁々発止とやり合いながらまとめた「米英ロック名盤のリスト」というものが、アメリカにも、イギリスにも複数存在する。

究極の洋楽名盤ROCK100

川崎大助(かわさき・だいすけ)

1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌『ロッキング・オン』にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌『米国音楽』を創刊。執筆のほか、編集やデザ イン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌『インザシティ』に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)がある。

Twitterはこちら@dsk_kawasaki

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