「無辺のなかの究極、100の珠玉」【第1回】著:川崎大助
川崎大助『究極の洋楽名盤ROCK100』

前者のなかで最も有名なものが、アメリカの音楽雑誌〈ローリング・ストーン〉(1967年に創刊)が2003年に初版を、改訂版を2012年に発表した「500 Greatest Albums of All Time」だ。後者のそれはイギリスの音楽メディア〈NME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)〉(52年に新聞形態で創刊)が2013年に発表した「The 500 Greatest Albums of All Time」だ。この2つの「名盤リスト」を素材として、僕はこの100枚を選び、順位づけをおこなった。つまり「〈ローリング・ストーン〉と〈NME〉のリストの中間値」を求めてみたわけだ。すると、驚くべき結果が、そこから浮かび上がってきた。

 

中間値は、このようにして求めた。まず、(1)リストに並ぶ、のべ1000枚のアルバムから「両方のリストにランキングされているもの」だけを抜き出した。この時点で1000枚が196枚に絞られた。次に(2)それぞれのランキングの最上位から最下位まで、順位に沿ってポイントを付与し、アルバムごとに双方のポイントを合算し、トータル・ポイントの多寡によって順位を決した。そのうちの上位100枚――つまり1000枚から選びに選び抜かれたベスト100が並ぶのが、この「究極の」リストだということになる。
※筆者注:〈ローリング・ストーン〉のリストは、2012年の改訂版を使用した。

 

ポイントの付与は、こんなルールでおこなった。リストの1位にあるアルバムに500点、2位が499点と、順位がひとつ下がるごとに1点ずつ減らしていった(つまり500位は1点だ)。こうしたポイント方式のため、複数枚が同スコアとなる例もあった。そんな場合は、発表年(月日)が古いものを上位に、新しいものを下位に置いた。そうした理由は、先行する作品を参照しながら制作を進められるため「後発組のほうが原則的に優位にある」と考えられるからだ。

 

以上のようにして、1位から100位まで、序列に沿って1枚ずつ並ぶ「究極の名盤リスト」が完成した。とんでもなく不思議、かつ同時に、絶妙な説得力のある「ベスト・リスト」が、いま僕の目の前にはある。ロックを知る人ほど、幾度も幾度も「まさか、そんな」とつぶやきたくなること必至の「ベスト100」がある。

究極の洋楽名盤ROCK100

川崎大助(かわさき・だいすけ)

1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌『ロッキング・オン』にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌『米国音楽』を創刊。執筆のほか、編集やデザ イン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌『インザシティ』に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)がある。

Twitterはこちら@dsk_kawasaki

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