外国の「チップ」と日本の「こころづけ」はどう違うのか
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対価ではなく、感謝のこころを示すもの

 

日本では、誰に対してもチップを渡すことはありませんが、「こころづけ」を渡す習慣は存在します。

 

この二つを比べると、チップは、提供されたサービスに対して払うべきもの、こころづけは、払わなくてもよいもので、感謝のこころを示すもの、という明確な違いがあります。

 

こころづけについて、外国の方から説明を求められるときには、どのように答えたらよいのでしょうか。

 

こころづけは、結婚式や披露宴、パーティーやレセプションなどにおいて、お世話になるスタッフやその他の関係者の方々にお渡しします。

 

また、旅館などで、お世話になる方にお渡しすることもあります。

 

最近は、旅館の宿泊費にサービス料が含まれるので、こころづけは必要ない、と思う方が増えているようですが、お渡ししていけないものでもありません。

 

また、旅館では、到着してから部屋へ案内してくださる方と、食事などのお世話をしてくださる方とが異なる場合があります。

 

基本的には、部屋に入った後、担当してくださる仲居さんが、ご挨拶と夕食の時間の確認にきてくださったタイミングで、お渡しすることが多いかと思います。

 

まだサービスを受ける前にこころづけを差し上げることに、違和感を覚える方がいらっしゃるようですが、それは「サービスに対する対価を支払う」という感覚が強いゆえかもしれません。

 

旅館でのこころづけは、これからお世話になることへの感謝を表すかたちです。

 

もちろん、初めはこころづけをお渡しする必要はないと思われていても、滞在中にこころを尽くして対応してくださったことへの感謝の気持ちとして、帰り際にお渡しになることがあっても不思議ではありません。何よりもご自身のこころからの行動であることが大切です。

 

いつでもこころづけを包めるように、用意しておきたい懐紙

 

あらゆる場面でお金をお渡しするようになったのは、戦後からといわれています。なぜなら、清浄感を重んじる日本人にとって、お金はあらゆる人が触れたもの、すなわち不浄と捉えられていたためです。

 

それゆえ、こころづけをお渡しする際には、新札を用意しておきましょう。

 

海外の方は、エコロジーの感覚から、紙の無駄使いと思われるかもしれませんが、紙幣を直接差し上げることは失礼ですので、ポチ袋に入れる、または懐紙で包みます。

 

突然、こころづけを包む機会がないとはいえませんので、日頃からハンドバッグの中に懐紙をしのばせておくと便利です。

 

懐紙を携帯される場合は、懐紙が汚れないように、懐紙入れ(懐紙ばさみ)やポーチなどに入れましょう。

 

 

以上、『外国人に正しく伝えたい日本の礼儀作法』(小笠原敬承斎著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。

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