消えたアミューズメント・パーク化計画―――日本の8大聖地・靖国神社
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agarieakiko

2019/02/07

日本では土着の信仰である神道のほかに、朝鮮半島や中国から仏教がもたらされ、多くの聖地が生まれた。参拝客が絶えない「開かれた聖地」がある一方、「封印された聖地」もある。パワー・スポットとも呼ばれる聖地には、一体どんな秘密があるのか。その謎に迫る。

 

終戦記念日以外の「靖国」の顔

 

 

日本には膨大な数の神社が存在するが、ニュースなどで取り上げられる頻度がもっとも高いのは、戦没者が「英霊」として祀られている靖国神社だろう。

 

靖国神社という名前を聞けば、多くの人は戦争やナショナリズムのことを思い起こす。とくに「A級戦犯」が合祀されていることが明らかになってからは、首相の公式参拝の是非が内外で問われるようになってきた。

 

ただし報道されるのは、ほとんどが8月15日に関することばかり。それ以外の日に靖国神社がどういった姿をとっているのか――問題はそれが描かれていないことにある。

 

ビジネスマンとギャルの聖地?

 

 

靖国神社は、通常の神社がそうであるように、祭神を祀った領域は封印され、みだりに立ち入ることができない。しかし、その全体を封印することはできない。英霊は関係者にとってだけの存在ではなく、国民全体に開かれた存在でもあるからである。

 

正月明けには、仕事始めを終えた会社員たちがこぞって参拝に来る「ビジネスマンの聖地」となり、お盆に開かれる「みたままつり」では夜店の屋台を目当てに来る「ギャルの聖地」という顔もあった(2015年からは夜店は一切禁止となった)。

 

実は、戦後間もない頃、靖国神社を一大アミューズメント・パークにしようという計画さえあった。境内に音楽堂や美術館、博物館、映画館、マーケット、能楽堂などを作ろうというものである。そうした施設の従業員は戦没者の遺族から選び、純益は神社の維持費に充当させる計画だった。

 

そこには、敗戦によって戦前の体制が崩れ、靖国神社の存続が危機に瀕していたという事情があった。

 

この計画は実現されなかったわけだが、もし実施に移されていたら、その立地や集客力の高さから、かなりの成功をおさめていた可能性が考えられるだろう。(続きは本で)

 

以上、『日本の8大聖地』(島田裕巳著、光文社知恵の森文庫)の内容を一部改変してお届けしました。

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