逆流性食道炎、過敏性腸症候群……腹部の症状と「糖質過剰」の関係
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◆逆流性食道炎やバレット食道も糖質過剰

 

逆流性食道炎も、糖質制限をしっかりすることで明らかな改善を見るので、糖質過剰症候群の一つである。

 

インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームは、逆流性食道炎のリスクを増加させる。

 

糖質摂取量の増加に伴い逆流性食道炎になるリスクが増加し、糖質制限をすると10週以内に全員が改善し薬を中止できたという報告もある。

 

(Pointer,SD. et al. Dietary carbohydrate intake, insulin resistance and gastro-oesophageal reflux disease: a pilot study in European- and African-American obese women. Aliment Pharmacol Ther. 2016,Nov;44(9):976-988.)

 

また、胃酸の逆流により、食道部分が酸にさらされる機会が増えると、食道粘膜の組織学的な変化、バレット食道というものを起こす。

 

バレット食道の患者も、インスリンやIGF‐1(インスリン様成長因子1)の増加を認める。

 

バレット食道の人135人と、対照群932人を比較した研究では、インスリン値とIGF‐1値で3つのグループに分けた場合、最もインスリン値が高いグループで2倍、最もIGF‐1値が高いグループで4倍もバレット食道が起こりやすくなっていた。

 

(Greer,KB. et al. Association of insulin and insulin-like growth factors with Barrett’s oesophagus. Gut. 2012,May; 61(5): 665-672.)

 

萎縮性胃炎や、胃の手術後などだけでなく、年齢とともに胃酸が少なくなると、小腸内細菌異常増殖(SIBO)と言って、小腸内に細菌が異常に増殖する。

 

大量の糖質を摂取すると、小腸の細菌は糖質を発酵し、ガスを産生する。

 

そのガスにより腸の圧力が高くなり、胃にもガスが入り込み、それが胃酸を逆流させると考えられる。

 

SIBOによってガスが発生するが、そのもととなるのは糖質である。

 

(Morihara,M. et al. Assessment of Gastric Acidity of Japanese Subjects over the Last 15 Years. Biol Pharm Bull. 2001,Mar;24(3):313-5.)

 
◆乳糖吸収不良より多い「果糖吸収不良」

 

大人では、乳糖を分解できない乳糖不耐症が有名であるが、実際には果糖やブドウ糖の吸収不良も多く認められる。

 

原因不明の腹部の症状のある人で、乳糖吸収不良は35%に認められるが、果糖吸収不良は実に64%に認められ、複数の糖質の吸収不良を認める人も実に25%も存在していたという報告もある。

 

果糖吸収不良は25gの果糖でも起きる人もおり、ブドウ糖50gの吸収不良を認める人もいる。

 

(Goebel-Stengel,M. et al. Unclear abdominal discomfort: pivotal role of carbohydrate malabsorption. J Neurogastroenterol Motil. 2014,Apr 30;20(2):228-35.)

 

つまり、現在の糖質は過剰であり、人によっては糖質を吸収できる上限を超えている場合もあるのだ。

 

吸収できなかった糖質は、細菌により発酵されて、ガスを産生する。

 

それらのガスが腸の圧力を高め、ガスが胃に行けば、逆流性食道炎に、大腸であれば過敏性腸症候群になると考えられる。

 

さらに、それ以外の、何となく感じる腹部の不快感、お腹の張りなどの多くは、このような糖質の吸収不良が原因だと考えられる。

 

…………

 

以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。

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「糖質過剰」症候群

「糖質過剰」症候群あらゆる病に共通する原因

清水泰行(しみずやすゆき)

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