社会学+人生相談『シャガクに訊け!』大石大
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ryomiyagi

2019/10/29

 

通っていた大学に、カウンセリングルームがあった。どんな話をしてくれるのか興味があり、行ってみたいと思っていた。だが、不幸なことに当時の僕には相談すべき悩み事が何もなく、一度も利用できずに大学を卒業してしまった。

 

それから十年後、大学で学んだ社会学の知識を生かして小説を書けないか、と考えていた時、カウンセリングルームの存在を思い出した。社会学部の先生がカウンセリングを行い、学生の悩みを社会学の知識で解決する、という設定を思いついた時、誰も書いたことのない小説が生まれる予感がした。

 

僕は決して優秀な学生ではなかった。興味のない講義はサボったこともあったし、単位もいくつか落とした。どこにでもいる、ごく普通の学生だった。それでも、社会学という学問の面白さは自分なりに感じていた。

 

それは、常識が覆された時の快感だ。

 

様々な社会のあり方を学ぶ中で、自分が信じる正しさは決して絶対的なものではなく、他の社会には異なる正しさが存在することを学んだ。ある社会問題に対して抱いていた考えが、思いもよらない視点によって覆されることが何度もあった。今まで考えたこともないような角度から社会を捉えることで、自分の視野がどんどん広くなっていくのを感じた。

 

そんな社会学を人生相談にぶつけてみたら、思いの外(ほか)相性がよかった。社会学の知識を用いて新たな視点を示すことで、学生は悩みから抜け出すヒントを得る。未熟な学生たちが、学問の知識で人生を切り開き、人間として成長する、そんな小説ができあがった。

 

僕の持つ知識の量は、本職の社会学者には到底及ばない。だけど、僕が社会学を学ぶ中で「面白い!」と感じたことを軸にして書けば、きっと魅力的な小説になる。そう信じて書き上げた。読むに当たって専門的な知識は不要だ。「社会学って何なの?」という人にこそ、本書を読んでいただきたい。

 


『シャガクに訊け!』
大石大/著

 

【あらすじ】社会学部一人気のない『上庭ゼミ』に入った松岡えみるは、上庭先生の学生相談室の補佐をすることに。学生たちは人間関係に悩んでおり、上庭は社会学の知識によって思いもよらぬ解釈をみせ――。楽しくってためになるまったく新しい青春×ミステリー。

 

PROFILE
おおいし・だい
1984年秋田県生まれ。法政大学社会学部卒業。現在は公務員。本作で第22回ボイルドエッグズ新人賞を受賞し作家デビュー。

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