『テレビドラマよ永遠に』著者新刊エッセイ 鯨統一郎
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ryomiyagi

2019/10/30

桜川東子(さくらがわはるこ)シリーズの新刊『テレビドラマよ永遠に』には中編二編が収められています。

 

一編目は『渡る世間に殺人鬼』。

 

飛行中の飛行機の中から人間一人が消えてしまう人間消失テーマに挑んでいます。

 

このテーマは過去にも夏樹静子(なつきしずこ)さんなどが取り組んでいます。飛行中の飛行機から人間が消えてしまうというのは魅力的な謎だと思います。この謎に私がどう挑んだのか? 答えは作品の中にあります。

 

二編目は『時効ですよ』。

 

一編目のテーマは人間消失でしたが、こちらは逆に人間出現です。二十年以上前に死んだ人物が複数の人間によって目撃されます。

 

いったいどういう事なのか?

 

瓜二つの別人なのか、それとも本人なのか?

 

こちらの答えも作品の中に記されています。

 

本作は全九冊を予定している桜川東子シリーズの八冊目にあたります。つまり残りあと一冊となったわけです。

 

作家デビューして間もなく書き始めたこのシリーズだからもう二十年近く書き続けている事になります。登場人物たちが、あちこち動き回るわけではなく、舞台はバーの中。

 

物語はそこから一歩も外に出ません。殺人事件を扱ってはいますが、犯人が実際に殺人を犯す場面や刑事の地道な捜査活動などは一切、出てきません。

 

すべて登場人物がバーで酒を飲みながら交わす会話だけで物語が進み、解決します。それが一作や二作ではなく全編そうなのだから我ながら感心します。しかも前作では三話、今作では全二話と収録作品数も減って短編ではなく中編です。

 

中編が丸々バーの会話だけでいったい小説が成りたつものでしょうか? その答えを本作を読んで確認してもらえたら幸いです。

 

テレビドラマよ永遠に
女子大生 桜川東子の推理

 

【あらすじ】バー〈森へ抜ける道〉を舞台に繰り広げられる、懐かしいテレビや映画やタレントの話。東西の童話、お酒の蘊蓄に、未解決の殺人事件の話。そして、桜川さんの鮮やかな推理。これ全部、登場人物のひとりが書いた小説だったとしたら……?変幻自在の本格推理。

 

PROFILE
くじら・とういちろう 1998年、『邪馬台国はどこですか?』でデビュー。近著に『戦国武将殺人紀行』『恋と掃除と謎解きと』『女子大生つぐみと邪馬台国の謎』など。

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