清原和博 涙のキャッチボール「野球が壊れた絆を…」
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ワールドトライアウト監督に就任。野球に救われた。

 

「じつは……、息子たちに会ったんです。僕が逮捕されて以降は一切、会うことが叶わなかったので……、3年ぶり……ぐらいですかね」

 

発売中の僧侶・鈴木泰堂氏との対談本『魂問答』。そのなかで、清原和博氏は昨年春、息子たちと再会を果たしたことを明かしている。
それは昨年3月に急逝した母の葬儀の少し後のことだった。

 

「もう、びっくりするほど大きくなってましたね。子供たちの顔を見て、まず真っ先に僕の口から出てきたのは、『ごめんな……』という言葉。だけど、そこからはもう、言葉はなにも出てこなくて……、出てくるのは涙だけでした」

 

再会の場所には「足がすくむほど緊張して行った」という清原氏。

 

「自分の犯した罪で、元妻と、二人の子供を、取り返しがつかないほど深く傷つけてしまったわけですから……。当然ですが、罪悪感も、すごくありましたし。お母さんが亡くなって間もなかったということもあって、心の整理もなにもできないまま、その日を迎えてしまったので……」

 

写真・宮澤正明

 

ためらいはあっても、最愛の息子たちとの再会は、望外の、無上の喜びでもあった。

 

「この先、子供たちと会える日なんてくるんかな……、せめて、執行猶予が明けてからでないと『会いたい』なんて僕からは言えないよな……、もし再会できることがあるとしても、きっと子供たちが成人してからなんだろうな……、そんなふうに、ずっと思っていましたから。
だから、あの日、僕から子供たちに言いたいことや、言わなければいけないことは、本当はもっと、もっとたくさん、あったと思うんですけど……。もう、「ごめんな」以外に、なにも出てこなくて……。ただ、ただ……僕は泣いてました」

 

ただ、涙を流し謝罪の言葉だけを続ける父に、息子たちはやさしく微笑み「大丈夫だよ」と声をかけてくれたという。
その後は息子たちと「涙のキャッチボール」。

 

「僕は相変わらず泣きながら、笑顔の子供2人を相手に……。あの日のキャッチボールのことは、きっと、これから先、僕は一生忘れないと思いますね」

 

写真・宮澤正明

 

いま、清原氏のもとには、あるインターネット番組の企画オファーがある。それは清原氏と同世代の元プロ野球のピッチャーと真剣勝負をする、というもの。

 

「最初は、この仕事のオファーをいただいたとき、すごく悩んだんです。自分の体調や精神状態を思えば『これは、勝ち目なんてゼロだ』と。断ることも一度は考えました。
でも……。やっぱり息子たちに会えたことで、僕の沈んでいた気持ちを引っ張り上げたんですね。たとえ勝ち目がなくても、不利な勝負でも、それでも、もう一度、バッターボックスに立つ姿を息子たちに見せたいと、そう思ったんです。
三振に倒れるか、ボテボテの内野ゴロに打ち取られるか……。もちろん、できるなら格好良く打つところを見せたいですけど……、でも、打ち取られたとしても、いいと思っていて……。
たとえ打ちとられようとも、ひと振りでもいいから、父親の僕が、いまの清原和博が、魂を込めたフルスイングを、息子たちに見てもらいたいんです」

 

そして、清原氏は鈴木氏に向かって、子供たちへの思い、野球への思いをこう強く訴えている。

 

「僕は改めて、今回ほど僕の人生に野球があってよかったと思ったことはないんです。
僕に野球があって、子供たちにも野球があった……、そのおかげで……、もう一度、会う機会を得ることができたと、そう思ってるんです。
そしていま、子供たちと再会を果たすことができて、強く、こうも思ってるんです。
僕がめちゃくちゃに壊してしまった親子の絆を、まずは野球を通じてですけど、もう一度、少しでも、本当に少しずつでもいいから、リカバリーしていきたいって」

 

魂問答
清原和博・ 鈴木泰堂 /著

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