清原和博「あの日」から4年、いまも残る逮捕の瞬間の記憶
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写真・宮澤正明

 

「いまも、2月2日が近づいてくると……、僕の心は不安定になります」

 

発売中の、僧侶・鈴木泰堂氏との対談本『魂問答』。そのなかで、清原和博氏は胸の内を正直に、こう明かしている。
2月2日ーーそれは、清原氏の心に刻みつけられた、特別な日付だ。

 

いまから4年前の2016年2月2日。その日のことを清原氏は『魂問答』のなかで、生々しく次のように語っている。

 

「2月1日にホテルで覚醒剤を使用して、翌2日に帰宅して休んでいたら、いきなり10人ほど、警視庁の捜査員が自宅のマンションに乗り込んできたんです。
でも、そのときはまだ頭が朦朧としていて……、幻覚でも見ているような感じでした。
すると、僕が持ち帰っていた残りの覚醒剤を見つけた刑事さんから
『これ、なんだ!?』
そう言って問い質されました。それで……、僕は正直に答えたんです。
『覚醒剤です』
そう答えたんですが……、そのときもまだ、夢でも見ているみたいで、現実のこととは受け止めきれていませんでした。でも、やがて……、
『2月2日、午後10時37分、覚醒剤取締法、現行犯逮捕!』
そんな、刑事さんの声とともに、自分の腕にガチャリと手錠がはめられて……。その、手錠の重みと、それから、金属の冷たさを感じた瞬間、もう……、頭の中が真っ白になって……。血の気が引いていくような感覚になって、言葉も、失ってしまって……。
そこからは、頭のなかでは『どうしよう、どうしよう、どうしよう……』という言葉だけがぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐると……、回り続けていました」

 

そもそも、2月1日に、彼が覚せい剤を使用したことにも意味があった。清原氏はその当時の心境を、自ら改めて分析してみせる。

 

「逮捕された日の前々日、1月31日に、僕は覚醒剤を買いに行ったんです。そして、2月1日に使ったんです。
それはやっぱり、(2月1日というのは)野球関係者は皆、お正月のような晴れがましい気持ちでキャンプを迎えているというのに、自分は……、いったいなにをしてるんだろう、そういう気持ちから、寂しさが募って……、そして、薬に逃げてしまったんだろうと思います」

 

鈴木氏との対談では、逮捕後の取り調べのようすや、44日間に及んだ辛い勾留生活についても赤裸々に語っている清原氏。そんな彼に鈴木氏は「逮捕されたことや、その後の勾留生活は清原さんにとって『善知識』ではなかったのか」と説く。

 

「仏教には『善知識』という言葉があるんです。ここでいう知識とは、勉強して身につけた情報や教養のことではなくて、自分を良い方向に導いてくれる先生や知り合い、友人のことを指すんです。また同時に、良いご縁をいただけることがらや、機会という意味もあるんです」(鈴木氏)

 

写真・宮澤正明

 

さらに鈴木氏は「この先の清原さんには、まだまだ輝かしい未来が待っている、僕はそう確信している」として、こう言葉を続ける。

 

「そんな明るい未来を手にしたときに、そのきっかけはなんだったのかと振り返ってみれば、それは清原さんが、いまはひょっとするとネガティブに捉えていたことがらかもしれないんです。
苦しく辛い経験をしたことを契機に、人生を大きく変えることや、新しい自分の道を切り開くことができたと、そう言い切れるようになるかもしれないんです。
つまりは、それが善知識というものです
《中略》
いつか、心の底から『あの逮捕のおかげで、いまの自分がいる。逮捕してくださったことに、いまでは心から感謝しています』、そう言えるようになる日が、来ます、必ず来ますよ。そして、そのときはもう、僕が、お役御免になっているはずです」(鈴木氏)

 

4年という歳月が流れた現在も、あの逮捕の瞬間を「ありありと思い出す」と話す清原氏。少し前には覚せい剤を使用し逮捕されるリアルな夢を見て、恐ろしさのあまり飛び起きたこともあったという。

 

「逮捕されたことに感謝するーー。正直、本当にそんな日が来るのか、僕にはまだわかりません。ただ、あの恐ろしい瞬間の記憶が、僕の気持ちが再び薬物に向かうことを拒絶させてくれる、頑丈な歯止めになっていることだけは、間違いありません」

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