ryomiyagi
2020/05/25
ryomiyagi
2020/05/25
ケニアの旅は、驚きで呆気に取られたところから幕を明けた。
ジョモ・ケニヤッタ国際空港に到着。いつものように、車椅子を押してくれる職員さんが機内まで来てくれる。
おそるおそる言ってみたんだ。ずっと言ってみたかった、あの言葉を。
「ジャンボ」
そしたらすぐさま……
「Do you need help?」
と、流暢な英語で返事された。
はっず……!
ケニアはイギリスの植民地だったので、英語がペラペラな人が多いのだった。
この空港のセキュリティーチェックは、僕が経験した中で、世界で一番早かった。
30秒。30セカンズ。
遊園地の入園チェックばりに「カバン開けてくださいね〜」と、サラッと中を見られて終了だ。
ドライバー兼ガイドと合流して、アンボセリ国立公園というサファリのど真ん中へ、車で4時間の道のりをゆく。
ガイドのオモンディさんは、H.I.Sケニアの現地スタッフで、日本語がペラペラだ。
このオモンディさんの小咄が本当に面白い。
「アフリカの男性はふくよかな女性が好みなんですよ〜。アフリカの男性は、女性が通るとまずお尻を見ます! 逆にアフリカの女性はマッスルな男性が好きですね〜。でもでもアフリカの女性は、お腹が膨らんでいる男性も好きなことが多いんです!! なぜならお金持ちに見えるからなんですよね〜」
文字に起こすと面白さがまったく伝わらないが、アフリカ人がアフリカ人のイントネーションでこう力説すると、思わず笑いを誘われる。
さて、ここで不安だったのは宿だ。
ケニア? サバンナ?
車椅子は泊まれるんか?
僕と同じく、そう思われている方も多いはず。
しかしなんと、アンボセリ国立公園内には「オルツカイロッジ」というバリアフリーのロッジがあったのだ!
OL TUKAI LODGE(オルツカイロッジ)
エントランスから部屋までの段差はすべてスロープに改装されていて、部屋は広々、お風呂の中も段差がなく、トイレには手すりもあって安心。ご飯も豪華!何よりレセプションのサービスが手厚い。
こんなサバンナの奥地にバリアフリーの宿があるなんて。旅してみないと、実際に見てみないと分からないものだなぁ……。
でも、宿があるのは野生の世界。猿や大きなヒヒなどが、平然と部屋の周りをうろついている。
一度、部屋のドアを開けっ放しにしていた時に、「おはよっすー」といった感じで猿がひょっこり部屋に入って来ようとしてかなり焦った。
こうしたドキドキを面白さに脳内変換できる人にとっては、最高に楽しい宿かもしれない。
ケニアでは、蚊にも注意しなければならない。
この国で生活をする約70%の人がマラリアの危険にさらされているといい、絶対に蚊に刺されてはいけない。僕は虫除けスプレーと、マラリア予防薬「マラロン」を持参し、完全防備の体制だ。
しかーーーし!
空港から国立公園までの道のりの段階で、すでに2箇所も刺されてしまっていた。
おわた。
だ、大丈夫。
予防薬も持ってるし……(バクバク)。
あれれー? よくよく読んだら、ケニアに入国する24〜48時間前に飲めって書いてあるよぉ。予防薬飲む前に刺されちゃったからもう意味ないよね……。
勝手に意味不明な勘違いをして、その後2錠ほど飲んだが、なぜかその後は飲むのをやめてしまった。今考えるとほんまにアホ。
幸いなことに滞在中は高熱にうなされることもなく、大丈夫だー!ラッキー!と思っていたら、
「蚊に刺されてからマラリア発症までの潜伏期間は、12〜35日です」
と書かれたネット記事を発見!
刺されてからの1カ月間は、帰国してからも、頭の中から「もしかしたら俺マラリアかも……」という言葉が離れなかった。
そんなこんなでやっとサファリへ。
四駆の車に乗り込んで、広大な大地をひた走る。ゾウさんエリア、ライオンさんエリア、などはもちろんない。
動物たちの中で、僕が感動したのは「カンムリヅル」だ。
ガイドさんの説明によると、彼らは一度つがいになると、死ぬまで離れない。片方が死んだ時は、残されたほうは二度と他の異性と結ばれることはなく、死ぬまで一匹で生きるという。
なんともロマンティック。このくらい本気で人を愛してみたい。
アンボセリ国立公園の見所はなんといっても象で、大群に何度も遭遇した。「ライオンキング」のBGMを流しながら、夕暮れの象たちを眺めて気分を高めるミーハーな僕。
サファリを冒険していると、想定外の出来事が繰り返される。
エジプトとは真逆だ。エジプトでは、素晴らしいものを見に行ったら素晴らしいものが待っていた。
でもケニアでは、サファリでは、車で1時間走っても何の動物も見えないこともある。
でもだからこそ、いきなり象の大群に遭遇した日には大興奮!すごくすっごく冒険心をくすぐられる。
緊張と緩和。
旅は無限の楽しみ方があるけど、人生は想像通りには生きたくないなぁ。
僕が想像できる未来なんて、あまりにもちっぽけだから。
そんなことを思い知らされたのが、マサイ族との出会いだった(つづく)。
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