ゴシップの帝王が描く、忘れられない人の肖像 『夢でもいいから』著者新刊エッセイ 亀和田武
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BW_machida

2020/07/06

ゴシップの帝王。そう呼ばれて、もう何十年になるでしょうか。そう、ゴシップとスキャンダルの蒐集と記憶、さらにその真贋の鑑定に関しては、年季が入っているんです。テレビで見かける芸能評論家や政界通といわれるジャーナリストにも引けをとらないゴシップ通、それが私です。

 

そんな私がこの目で見て、体験し、いまも記憶に焼きついている、あの人、この人の忘れられない表情や言葉、プロフィールを記したのが、新著『夢でもいいから』です。

 

尾崎豊に始まり、尾木ママこと尾木直樹さん、さらには川上麻衣子、三谷幸喜、内田裕也などなどの、Wikiなんかには記されてない、私だけが見た姿が描かれています。

 

作家も登場します。戸川昌子さん、平井和正さん。豪放で波風を好む戸川さんとのやり取りをスケッチした章は、我ながら満足のいく、泣かせる一篇です。あっと驚く秘話も挿入されていて、自分でいうのも何ですが、たっぷり手間がかかっています。一世を風靡したウルフガイ=犬神明シリーズの作者、平井和正さんとの二晩連続の徹夜麻雀に登場する、意外すぎる人の名前も、期待してください。

 

川崎長太郎も出てきます。あの“私小説の神様”が不思議な縁で、私の前に現れたシーンは、いまも懐かしい。

 

もっともエキサイティングなのは、オウム真理教の上祐史浩とスタジオで二日間、ガチで対決した様子かな。ま、表の敵は上祐なんだけど、もっと性悪なインチキ野郎がいたんですよと明かされるくだりはスリリングです。

 

有名人の陰にひっそり配置された無名の脇役もいて、(あの人たち、どうしてるかなあ)と思いだされ、ぼんやり、しみじみ、彼らの顔を思いだします。彼らが主役に負けない味をだしてるエッセイなんです。でもね、それを冒頭からアピールするのも恥ずかしくて、ゴシップ本の面白さをまず強調した次第です。通して読めば〈平成史〉の側面も浮かぶかと、最後にまた大ボラを、吹かしてもらいましょう。

 

 

『夢でもいいから』亀和田武 /
本体1800円+税

 

【あらすじ】
尾崎豊、三谷幸喜、渡辺満里奈、甲斐よしひろ、Dr.コパ……。もう一度会いたい人やもう二度と会えない人。テレビも雑誌も、猥雑な熱気に満ちていた’80’90年代。忘れられない人たちと過ごした、濃密なひとときを綴るエッセイ集。

 

PROFILE
かめわだ・たけし 1949年生まれ。成蹊大学卒。『劇画アリス』編集長などを経て、フリーに。1982年『まだ地上的な天使』でデビュー。その後『スーパーワイド』などテレビ番組の司会者も務める。

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