『夢中力』堀江貴文、野村克也(3) 習慣をぶち壊せ。「新しいもの」は常識の外にある
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BW_machida

2020/10/27

 

趣味や好奇心は自由な営みで、なにに夢中になれるかは人それぞれ。考えてみれば、生き方だってそれぞれで、好きなことに夢中になるのはぜんぜん悪いことなんかじゃない。それなのに、いつからだろうか、固定観念や先入観が染みついて、「常識的」であることが正しいと考えるようになったのは。

 

「常識の延長線上には、当然『常識』しかありえない。疑う余地がないと思い込んでいることにあえて疑義を挟んでみる。『既存の価値観』に逆らい、前提を否定してこそ、新たなものが生まれるのだ。」

 

そう語る堀江氏は、江戸時代の「ちょんまげ」が不思議でならないらしい。あの髪型にいったいなんの意味があるのか。同じ理由で「スーツ」と「ネクタイ」も嫌いらしい。とはいえ、理由もなしに嫌悪しているというわけではない。それが「明文化されたルール」であれば、抵抗なく従うけれど「慣習」や「暗黙の了解」や「いい加減な常識」であるならば、従う理由はないと語る。これが普通だと信じてしまうと、見えなくなってしまう世界がある。

 

27年間の選手生活で通算3017試合、プレーイングマネジャーを含め監督として通算24年3204試合を経験してきた野村氏もまた、選手たちに固定観念に縛られないように伝えてきたという。たとえば、ピッチャーは一塁走者が二塁盗塁しないようにケン制球を投げる。一塁ケン制が終わったあとで、キャッチャーのサインを見てバッターにどんな球を投げるのかを決めるのだが、その常識をうまく使えば、一塁走者の虚を突いてアウトにできると野村氏は考えた。これを野村氏は「首振りケン制」と名付けた。

 

このように常識の真逆を考えれば、新しいものが生まれる可能性が見えてくる。思わぬ発見に出合うこともあるだろう。

 

堀江氏は自分が東大に合格できた理由を、英単語の丸暗記を「ゲーム感覚」で楽しんだからだと語っている。睡眠時間を削って勉強したところで頭に入るとは思えない。努力をしても高がしれている。それならば、と堀江氏は、英語が苦手という先入観を捨てることにした。まずは目の前の作業に「はまる」こと。夢中になって、没頭する。すると退屈な「英単語の丸暗記」が「面白いゲーム」になった。結果、実質半年の受験勉強にもかかわらず、見事に現役で東大に合格できたという。 

 

興味深いのは、この経験が人生において大きな自信になったと語っていることだ。常識的な方法論は捨て、実行して結果を出す。それが自信にもつながる。この成功体験は、それからの人生にも力を与えてくれたはずだ。

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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