従業員はお駄賃をもらう「奴隷」?ブラック労働者にならないためのマインドとは
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BW_machida

2021/02/25

「サービス残業」「がんばれば給料が上がる」「お金を増やさねばならない」……。「お金」に振り回されなければ生きられない現代社会。しかし、それは全て思い込みだった!?『小飼弾の超訳「お金」理論』では、お金に苦労しながらも成功を手にした投資家が、現代人の「お金」に関する誤解を解きほぐします。お金と世界の仕組みを知れば、あなたの生活も、変わる。

 

 

会社は従業員のものではない

 

毎朝起きて、電車に乗り、職場へ向かい、一定時間働く。その繰り返しによって会社は、そして社会はまわっている。モノやコト、サービスはそうして働く人々なしにはあり得ない。しかし残念ながら、従業員の存在は会社という仕組みの中では外様に過ぎないと、小飼氏は言う。
会社とは、資産を利用した活動によってさらなる利益を生み出すことを目的とした仕組みだ。
その仕組みを、左側に資産、右上に負債、右下に資本をあてはめ資産状況を把握するバランスシートで見ると、借金や株主資本、現金、預金、受取手形、売掛金、商品、建物、機械装置、土地、借地権など会社経営に必要な資産が並ぶ中に、「従業員」は含まれていないのだ。

 

 

不思議に思われるかもしれませんが、従業員という言葉はバランスシートのどこを探しても出てきません。ちなみに、従業員と社員は同じ意味で使われることが一般的ですが、会社法において社員とは株主のことを指します。法的に「社」の一員であるのは、株主なんですね。……(中略)
会社を所有している株主からすれば、従業員とは外様にすぎません。賃金という費用を支払って労働してもらっている、「会社の外にいる人」なのです。

 

従業員は会社の利益を生み出すために手足となって働く。それでも会社を所有しているのは株主で、その仕組みが生み出す利益を享受する資格があるのは、従業員ではなく株主になるのだ。

 

従業員は会社という仕組みを動かすお手伝いをしてお駄賃もらえるだけで、分け前はもらえません。法律の観点からすれば、従業員は、什器と同じ「消耗品」です。

 

残業なんてしなくていい

 

そんな仕組みの中、サービス残業をすることがどれほどおかしなことかは明らかだ。
上司から頼まれた業務を断れず、あるいは上司や同僚の仕事が終わらないのに一人抜けることもできず、あるいは人手不足のため手に余るほどの業務を常に抱えざるを得ず……。残業をする理由は各々あるだろうが、小飼氏は、お駄賃しかもらえない労働者が、長時間労働をする必要があるのかと問いかける。

 

従業員が残業を断ったことで、会社から不当な扱いを受けたのであれば、徹底的にごねる、居座る、仕事をしているフリをしてスクワットする。従業員として当然の権利を行使しているだけだと言い張ればいいんです。

 

スクワットはさておき、「お給料をもらっているのにそんな図々しいことできない」と思う人もいるだろう。しかし、海外に目を向ければ賃金引き上げのデモが頻繁に起こっている。日本人的なマインドからすれば「図々しい」要求を、労働者の当然の権利として主張している。
反対に日本では、雇用者側が図々しい要求をするばかりだ。コンビニエンスストアで、アルバイトの学生にもクリスマスケーキや恵方巻の販売ノルマが課されていたり、シフトを休む時には代わりの人員を見つけてこなければ給料が差し引かれる、そんな実態が度々報道されている。

 

これは、みなさんが経営者を甘やかしてつけあがらせているんです。
日本で起こっている企業不祥事の原因をたどっていくと、結局はそこに行きつきます。
会社をうまく運営して利益を出すのは経営者の仕事です。適切に人材を配置して、必要に応じてトレーニングしたり、どういう事業を行うのか考えるのも経営者の責任人手不足だからと言って、お駄賃しかもらえない労働者がマネジメントのことなど考える必要はありません。

 

「給料を上げてほしい」の考えはすでに負け  

 

日本人が抱える誤ったマインドとして、小飼氏は「給料を上げてほしい」と思うことをあげる。

 

給料を上げなくてはいけないと思っている時点で、あなたは負けている。
これはもうはっきり言います。
「給料を上げて」と言うのは、「どうやったら、ただの二等奴隷から奴隷軍曹や奴隷将校になれますか?」聞いているようなものです。奴隷軍曹だろうが、奴隷将校だろうが、待遇に多少の違いがあるだけで奴隷であることには変わりありません。

 

自分が「奴隷」だと言われてもピンとこない人も多いだろう。よほど人権感覚のない上司のもとで働いているのでない限り、自分を奴隷だなんて思わない。しかし、「手当を5割増しで出すから休日出勤して!」と頼まれて渋々でも「はい」と言ってしまう人は、十分ブラック労働者、すなわち「奴隷」の素養があるという。

 

安易にクビを切られるという、すごく弱い立場に置かれて、雇用主の言い値で働かされているのなら、結局のところ奴隷です。

 

給料が安いという人は、選択の自由があるにもかかわらずそうした奴隷的な立場に甘んじてしまっているのだ。
あなたは、奴隷になっていないだろうか?「会社の外にいる人」なのに、会社のためと働きすぎていないだろうか?立場の弱さを利用され消耗してしまっていないだろうか?

 

会社はあなたがいなくても回る。
お金と仕事と働き方を考えるために、ぜひ念頭に置いておいてください。

 

写真・文/藤沢緑彩
イラスト/村山宇希

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