「失われた20年」を作り出したものはなにか その実態を探る
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日本が低成長にあえぎ続けたと言われる「失われた20年」。
ただ、データからその期間にも業績を上げ続けていた多くの企業があったという事実が見えてきました。
だとすると、「失われた20年」を作り出したものとは一体なんだったのでしょうか?
そこには大企業の成長鈍化と、現実をとらえ損ねたメディアの失敗がありました。
藤野英人氏著『さらば、GG資本主義』から抜粋してご紹介します。

 

 

「日本経済は元気がない」という常套句があります。私は企業の成長に投資するファンドマネージャーですから、業績が上がらない会社ばかりだと、商売あがったりです。

 

じゃあ「失われた20年」と呼ばれるデフレ時代に、投資先を見つけるのに苦労したかというと、そんなことはありませんでした。

 

2002年から10年間で調べてみました。1990年代のバブル崩壊から、アベノミクスが始まる2010年代初頭までの「失われた20年」のちょうど後半に当たる時期ですね。この間に、上場企業のうち何割の会社の株価が上がったと思いますか? よくセミナーなどで私が会場の人たちに尋ねてみるのですが、50%を超える答えを出す人はほとんどいません。30%と答える人も、「ちょっと強気だろうか」と言ったりします。しかし実際は、なんと70%に当たる、1705社もの株価が上がっています(図2)。

 

 

株価を上げた1705社は平均して売上高と営業利益、さらに従業員の数がそれぞれ10年間で倍に伸びて、株価も倍になっています。年率平均約7%の勢いで成長しているのです。これだけ見ると、ちょっと「失われた」とは言えなくなりますね。

 

さらに、このアベノミクス前の同じ10年間の株価を市場別に、見てみましょう(図3)。東証2部上場企業の平均はプラス67%でした。中堅中小企業はなかなか悪くないですね。

 

 

ところが、日本を代表する銘柄群はどうでしょうか。「TOPIX Core30」は東証第1部上場銘柄のうち、時価総額・流動性が特に高い30社で構成される、日本を代表する大型株群です。

 

しかし、同じ時期の「TOPIX Core30」のパフォーマンスを見てみると、なんとマイナス24%なのです。

 

つまり、意外なことに90年代以降、業績を上げられず景気の足を引っ張ってきたのは、大企業なのです。ジャスダックや東証2部に上場しているようなベンチャーや中堅・中小企業の多くが、デフレ経済下でもしっかりと結果を出し、株価を上げています。

 

そういう会社を探していけば、優良企業はたくさん見つかりました。そのため、私はファンドマネージャーとして、世間が不景気だと騒いでいたころにも、投資先に困ることはありませんでした。

 

それにしてもなぜ、この事実に気付かず、「失われた20年」という言葉を使って、どの企業も成長していないようなイメージでひとくくりにしてしまうのでしょうか。

 

それは、ひとつには業績を報じるメディアと、情報を受け取る側の両方が、大企業にばかり注目しているからでしょう。大企業が赤字決算だと、メディアは大きく取り上げます。世の中の人々も、「大企業ですら調子が悪いのだから、中堅・中小企業はなおさら大変だろう」というトーンで受け取ります。

 

大学生の就職希望ランキングを見ても、成長率や業績とは関係なく、いまだに大企業がずらりと上位に並びます。大企業が上で、その下に中堅・中小企業がある。そんな色眼鏡で見ているから、「失われた20年」を間違えて捉えてしまうのです。

 

 

以上、『さらば、GG資本主義』をもとに構成しました。
いまだ高齢世代が牛耳り続ける日本から、ついに見えてきたポジティブな変化の兆しを最強のファンドマネージャーが語ります。

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