BW_machida
2022/04/01
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2022/04/01
『ドリーミングベイビー』光文社
新庄剛志/著
日本ハムファイターズ監督就任以来、連日カメラの前に現れては、その破天荒な言動で野球ファンをときめかせてくれているBIG BOSS新庄。すっかり米大リーグ・大谷選手にニュースバリューを持っていかれた感すらあった日本プロ野球に、颯爽と新風を吹かせるBIG BOSSには、感謝と期待しかないのだ。
そんな日本プロ野球界の異端児・新庄剛志が、これまた電撃的に米・大リーグ、メッツに移籍した折りの本音を吐露した『ドリーミングベイビー』(光文社)が電子書籍として復刻した。そのタイトルにある通り、ドリーミングベイビー・新庄剛志の、野球に対する思いや、恩師と仰ぐ故・野村克也監督とのやり取りや阪神タイガースへの思いなど、恥かしげもなく書き綴った貴重な一冊が電子書籍で蘇った。さっそく手に入れてみた。
その年、阪神タイガースから提示されたのは12億円5年契約。しかし、その時の新庄が耳を傾けたのは、野球小僧の頃の「本場アメリカで思い切り野球をしたい!」だった。しかし、米球団から提示されたのは年俸2000万円。しかも、正式にオファーがかかるかどうかも覚束ない、それが夢に見た大リーガーとしてのスタートだった。
「新庄は横浜かヤクルトか?」。当時のマスコミは、じっとメッツのオファーを待つ新庄をそう報じた。勢い、一転大リーグ行きを発表した新庄に、心無い声が殺到した。
確かに、多くの野球少年が憧れるプロ野球界において、抜群の野球センスに恵まれて、常に飄々と、まるで苦労など知らない風を装うプロ野球選手・新庄剛志の姿は、理解されるよりも遥かに多くの嫉妬と誤解を生んできた。そして、野球選手として絶頂期を迎えた当時、選手・新庄の去就には多くの野球ファンが気を揉んでいた。
そんな折りに、突然、降って湧いたように大リーグ行きを宣言したのだから、数多の野球ファンが見せたリアクションは辛辣を極めたに違いない。
しかし本書に描き出された新庄剛志は、まるで少年のように、野球小僧そのままにより高度な野球に憧れるさまを晒していた。
ともすれば「いいトコ付き」とすら見える、それほどの幸運に恵まれた(恵まれたのではなく引き寄せているのだが)男で、言動は派手を極め、およそ真剣に取り組んでいるとは思えないような男だ。確かに、そうとしか見えないほどの才能とセンスに恵まれた選手だったのだろう。しかし、それほどの才能とセンスを持って生まれたにもかかわらず、新庄剛志は、その岐路において「損得」を尺度にすることのない、素敵としか形容し得ない男だった。
『ドリーミングベイビー』(光文社)は、そんな日本野球の救世主としか言いようのない野球人・新庄剛志BIG BOSSの純粋な“スピリッツ”が読み解ける一冊だ。
文/森健次
※電子書籍にて復刻発売中
『ドリーミングベイビー』光文社
新庄剛志/著
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