ハムに発色剤が!日本に来てショックを受けた人工的な食材
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『写真:AFLO』

 

まだ日本にやってきたばかりのころは、スーパーに行っても、プロシュート・クルード、すなわち生ハムなどというものを売っているところはほとんどなかった。

 

生ハムを使った料理を自分で作ろうと思って、何軒かの小売店を回り、お店の人と話をすると、当時のこの国の食材事情について、僕にとっては興味深いことがいくつかわかった。

 

まず一つ目は、僕が探しているものを、日本人は英語で「ハム」と呼んでいること。二つ目は、生ハムというものは置いていなくて、加熱したものしかないということ。三つ目は、それらのハムの「色がよすぎる」ということ。そう、あまりにも見た目が「美味しそう」に見えすぎたのだ!

 

家に帰ってパックを開けてみると、プラスティックの包装の中に、少しだけ水分が出ていた。その水には色がついていた。僕は心配になった。本当にこれを食べても大丈夫なのだろうか?

 

それで、うちにやってきた日本人のお客さんに「買ってきたハムがちょっとおかしいんだけれど」と相談してみた。すると彼は、にっこりしてこう言った。

 

「ハムには色がつけてあるんだよ。発色剤さ。知らなかったのかい?」

 

日本では、ハムに色がつけてあるって……? 正直、僕は絶句してしまった。

 

皆さんにはピンとこないかもしれないが、イタリア人の僕にとって、これはある種のカルチャーショックだった。僕の祖国では、ハム、つまりプロシュートというものは、豚肉を塩に漬けて、空気中にぶら下げて熟成させるか、それをさらに加熱するか、それしか作り方はない。

 

それからずいぶん長い年月が経ったけれど、いまだに日本産のプロシュート=ハムは、たいてい「美味しそうに見えすぎる」色のままだ。裏ラベルの原材料を見ると、豚肉、塩のほかに、発色剤をはじめ、なにかしらの「混ぜ物」が少なくとも数種類入っている。

 

これが信じられない事態だということが、日本の方には理解できないかもしれない。日本人は、口に入るものはとにかく「国産」であれば、自然で安全だと思っているふしがある。

 

でもそれは正直いって、お隣の大国やアメリカを基準に考えているからに過ぎない。日本の食品にも、EUの常識から考えたら信じられないことが、実はたくさんあるのだ。

 

たとえばグルタミン酸などの化学調味料は、日本では低価格の商品だけでなく「手作り」とされる高級な加工食品にもしばしば使われていることがある。

 

だがイタリアに限らず、ヨーロッパのほとんどの国において、化学調味料、合成保存料、人工着色料や発色剤などといった添加物すべてが、価格帯が低く、質もよくないと誰もが想像するような商品以外に使われることは、まずない。

 

もちろんイタリアでも、第二次大戦の後から、1960年代初めごろにかけては、日本と同じように、アメリカをモデルにした食文化が社会の主流になっていた。

 

工業的に作られ、パックされた食品は、むしろ「現代的な」ものの象徴であり、イタリアの伝統より先進的でカッコいい、アメリカ文化を身近に感じさせてくれるアイテムだったのだ。

 

だが、今はイタリアの食文化や食習慣に変化が起きている。1970年前後からイタリア人は、主にスーパーマーケットなどで売られる大量生産の食料品の中に、どんなものが入っているか敏感になってきた。

 

同時に、食品添加物を規制する法律も、格段に厳しくなった。そして今では、すべての食料品は「ナチュラル」なものであるか、少なくとも広告やパッケージのデザインにおいてはそうであることを強調しなければ売れない時代になっている。

 

イタリアでは、大手のスーパーマーケットチェーンの支店でも、ナチュラルで、ビオロジックで、なおかつ値段も手ごろな商品だけを選んで買うことは可能だ。

 

しかし、僕の経験から言うと、日本の普通のスーパーでそうした買い物をするのは、イタリアと比べてとても難しい。場合によっては、ため息が出るほど不可能に近い場合もある。

 

和食が健康的なものであると世界的に認められ、ユネスコの無形文化遺産にも指定されたというのに、普通の日本人が毎日買って食べている食材がこれほど人工的で、健康のことを考慮していないものであるというのは、いったいどうしたことだろう?

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