誰がトランプを支持しているのか?大ベストセラーで読み解く(1)
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トランプ大統領の主要な支持層と言われる、白人貧困層。「ヒルビリー」とも言われる彼らの実態について書かれた本が、アメリカで売れ続けている。その邦訳版の刊行にさきがけ、本文の一部を少しずつ紹介していく。

 

私は「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる一帯に位置する、オハイオ州の鉄鋼業の町で貧しい子ども時代を送った。そのころの記憶をどれだけさかのぼってみても、当時から現在にいたるまで、その町は、仕事も希望も失われた地方都市であることに変わりはない。

 

ひいき目に見たとしても、私と両親との関係はずっと複雑だった。一方の親は、私が生まれてからずっと薬物依存症と闘っている。私を育ててくれた祖父母は、どちらも高校も卒業しておらず、カレッジを卒業した親類もほとんどいない。統計資料によれば、私のような境遇に育った子どもは、運がよければ公的扶助を受けずにすむが、運が悪ければ、ヘロインを摂取しすぎて命を落とす。昨年、私の故郷の小さな町で何人もが亡くなったように。

 

私自身も、将来に望みのない子どもの一人だった。高校では落第しかけ、この町では誰もが抱く、怒りやいらだちに屈しかけていた。この町の人々は、現在の私を、まるで天才でも見るような目で眺めている。彼らにとって、私がいまの職業に就いたことや、アイビー・リーグの名門大学院を修了したことは、非凡な人物にしか達成できない偉業だからである。

 

しかし私には、そうした考えがまったくのたわごとに思えてならない。何かの才能があったとしても、愛情深い何人かが救いの手を差し伸べてくれるまで、私はその才能をほとんど浪費していたからである。

 

本書は、私の人生の偽りのない物語である。自分自身に見切りをつけようとしたときに、どう感じるのか、なぜそうせざるをえないのかを、多くの人に知ってほしい。本書を通じて、貧しい人たちの生活がどのようなものなのか、精神的・物質的貧困が、子どもたちにどれだけ影響を及ぼすのかを伝えたい。

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ヒルビリー・エレジー

ヒルビリー・エレジーアメリカの繁栄から取り残された白人たち

J・D・ヴァンス/著 関根光宏/訳 山田文/訳

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