akane
2019/02/19
akane
2019/02/19
ブラックホール――。なんとも無気味な響きがする言葉です。そのイメージはどんなものでしょうか。
・重力で潰れてしまった天体らしい
・光さえ脱出できないらしい
・吸い込まれたら一巻の終わり
・できれば、人生の中で出会いたくない
といったところでしょうか。
このたび、『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』(光文社新書)を刊行した放送大学教授・天文学者の谷口義明さんは、アメリカ・ハワイ島のマウナ・ケア山山頂にある日本の国立天文台の大型光学赤外線望遠鏡である、すばる望遠鏡を用いた深宇宙探査で128億光年彼方にある銀河の発見で当時の世界記録を樹立された方です。また、地上約600キロメートル上空の軌道上を周回する宇宙望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡の基幹プログラム「宇宙進化サーベイ」では宇宙の暗黒物質(ダークマター)の3次元地図を作成し、ダークマターによる銀河形成論を初めて観測的に立証した方でもあります。
谷口さんのご専門は銀河天文学、そして観測的宇宙論ですが、天文学者を目指したのは、美しい銀河のことを理解したかったからだそうです。
銀河は、いつ、どのようにして生まれたのか。そして、100億年以上の時間をかけて、銀河はどのように育ってきたのか――。
これからの答えを探して、長年、銀河の観測的研究を行ってきました。
そして、銀河の研究を行っていると、ブラックホールとは無縁というわけにはいかないそうです。それは、銀河の中心には必ずといってよいほどブラックホールがあるからで、その質量は、なんと太陽の質量の100万倍以上もあるといいます。このようなブラックホールは〝超大質量ブラックホール〟と呼ばれていますが、それは、私たちの住む天の川銀河(銀河系)にもあります。
その質量は、なんと太陽の400万倍。
では、そもそもなぜ、ほとんどの銀河の中心には超大質量ブラックホールがあるのでしょうか。
じつは、そんな基本的な問題ですら、現在の科学では答えが出ていないそうです。
谷口さんによると、ブラックホールを研究する場合、どこに主眼を置くかで大きく2種類に分かれるそうです。これは、ブラックホールを物理の観点から調べるか、あるいは天文学の観点から調べるかということを意味します。
物理の観点からブラックホールを正しく理解することは、私たち一般の人間にとってはかなり難しくなります。それは、アルベルト・アインシュタインが導き出した重力理論である、一般相対性理論を用いなければ理解することができないからです。つまり、理論的にブラックホールについて考える以外に道はありません。実験室でブラックホールを扱うことは不可能ですし、また、そもそも実験室でブラックホールを造ることはできません。仮に造ることができたとしても、かなり危険な目に遭うでしょう。
一方、天文学の観点からブラックホールを調べる場合、まずは観測的な証拠を集めることらスタートします。宇宙全体を見渡せば、そこには広大な自然の実験室です。そして、天体現象がブラックホールを造った可能性は十分にあるのです。つまり、広い宇宙にブラックホールを探し出し、その性質を見極めていくことが重要になるのです。
さて、私たちはブラックホールについて、どんなことが知りたいでしょうか。
谷口さんによると、例えば銀河を研究する場合、大切な問題は次のようにまとめることができるといいます。
・銀河はいつ生まれたのか?
・銀河はどうやって育ってきたのか?
・銀河はなぜ宇宙にたくさんあるのか?
・銀河のこれからの運命は?
・銀河にも死は訪れるのだろうか?
そしてブラックホールを研究する場合、重要な疑問は「銀河」を「ブラックホール」に置き換えるだけで事足りると語ります。つまり、
・ブラックホールはいつ生まれたのか?
・ブラックホールはどうやって育ってきたのか?
・ブラックホールはなぜ宇宙にたくさんあるのか?
・ブラックホールのこれからの運命は?
・ブラックホールにも死は訪れるのだろうか?
前述の書籍では、これらの問題に対する答えが探られています。
宇宙には、数え切れないほどのブラックホールが存在します。
はたして、それはどういう存在なのでしょうか。
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