akane
2018/09/03
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2018/09/03
現代企画室「セルバンテス賞コレクション」、水声社「フィクションのエル・ドラード」シリーズなどに牽引されて、このところラテンアメリカ文学の翻訳紹介が新作旧作ともに活性化している。2007年に東京・麹町に「セルバンテス文化センター」が開設され、スペイン政府が、自国文化の紹介に本格的に力を注ぎ始めたことが大きかったという。グローバル化の進展がローカルで繊細な文化的視点の拡大を促すという、読書好きには好ましい事態があるわけだ。
この勢いに乗り、光文社古典新訳文庫では60年代の名作映画、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の『欲望』の原作者として、当時から著名だったアルゼンチン出身のフリオ・コルタサル(1914~1984年)の知られざる魅力を再発見しようと、これまでまとまった形で紹介されることのなかった処女短編集『動物寓話集』(BESTIARIO、1951)を、原著の作品構成もそのままに『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』として刊行した。そこで見つかる面白さとは何か。翻訳者の寺尾隆吉さんに伺った。
──お訊きしたいことは3点です。今回の『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』(以下『奪われた家/天国の扉』)のこと、作家コルタサルのこと、それに翻訳家・寺尾さんの近況について。もちろん、この3つは重なっていて区別して語るなんて無茶ですから、興味深いトピックなどを交えて、自由に語っていただけたらと思います。まず、最近の韓国出張の話から始めましょうか。
寺尾 そうですね。この6月9日に韓国のチェンジュという町にある全北大学校で、EANLAS(East Asian Latin American Studies/東アジア・ラテンアメリカ研究)という、中国と韓国と日本が参加するラテンアメリカ研究組織のシンポジウムがあり、文学分野の発表者も参加してほしいということで、私が呼ばれました。
発表のテーマは、この1月に翻訳を刊行したばかりの『マイタの物語』(水声社、「フィクションのエル・ドラード」)というバルガス・ジョサのメタ・フィクションです。「政治と文学」という括りのなかで、いかにしてバルガス・ジョサが政治と文学の線引きを行って大統領選挙へ踏み出すことになったか、その経緯を小説のテクストに沿って分析しました。
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