2019/02/11
でんすけのかいぬし イラストレーター
『黒猫/モルグ街の殺人』光文社古典新訳文庫
ポー/小川高義訳
話も、やってはいけないとわかっていながら、道を外してしまう、良い意味で暗くて不気味な雰囲気漂う話が詰まった短編集。
本来なら表題作のレビューを書くのがいいのだろうけど、表題作の『黒猫』は1匹めの黒猫も2匹目の胸が白い黒猫もウチの猫みたいじゃないか!と、かわいいかわいい我が家の愛猫目線で読んじゃってるもんだから猫飼いにはキツい話だし、モルグ街の殺人は盛大なネタバレする自信があるのでやめておく!(じゃあ何で選んだんだ……)
お気に入りだった『ウィリアム・ウィルソン』のレビューです。
理性が抑えられず、人を支配したい性格の“私”(仮名ウィリアム・ウィルソン)は、クラスの(ワルとして)リーダー格になっていく。
そんな彼にひとりだけ公然と抵抗する人がいた。
同じ日に入学し、同じ誕生日で、名前まで同じもう一人のウィリアム・ウィルソンだ。
“私”は必死にもう一人のウィルソンに対して虚勢を張っていたが、全然敵わない。
それに加え、ウィルソンはどういうつもりなのか“私”の服装や話し方やしぐさを真似し、顔までどんどん似て来て、何かと付きまとうようになる。
ただのドッペルゲンガーのならまだしも、だんだん自分に似てくるっていうのがなんとも不気味。
時が経って、スッカリ不良になってしまった“私”は、賭け事で知り合いを騙して金を巻き上げていた。
そんな時にマントを着た男が突然現れて『左袖の裏地をお調べください』と、いかさまをしていたことをバラしてしまう。
男の正体はウィリアム・ウィルソンである。
その後もなぜか“私”の行く先々でこんな嫌がらせをする。
薄気味悪いなぁと持っていたところ、「私が何を企み何をするにせよ、そのまま遂行すれば悪事になるという場合にのみ邪魔が入る」という一文を読んで、ドッペルウィルソン、実はメッチャ良いヤツじゃん!と思った。
そう、彼は“私”の良心の化身である。
自分の中の悪魔が囁いて悪いことしちゃった系の短編が多い中で、「ウィリアム・ウィルソン」だけは良心が見え隠れして、またちょっと違う面白さがある話だと思う。
思わず『ダメー!やめてー!』と思ってしまうラストを読んで、もう一度冒頭部分を読んでみてほしい。
もう一回、ゾクゾクできます。
光文社古典新訳文庫のサポーターとして毎月POPを描いています!
『黒猫/モルグ街の殺人』光文社古典新訳文庫
ポー/小川高義訳