2019/10/28
小説宝石
『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』講談社
相沢沙呼/著
推理作家の香月史郎(こうげつしろう)は、警察に協力し捜査への助言をしてきた。彼は、城塚翡翠(じょうづかひすい)という霊媒と出会う。彼女は、死んだ後に停滞する人の意識を感じとれるらしい。その力によって、事件の真相の手がかりや、時には犯人自体を知ることができる。
しかし、当然、霊視は証拠にならない。このため、翡翠がみつけた真相を警察に納得させようと、香月は推理の論理を逆算して組み立てることになる。よいコンビになった二人は次々に事件を解決していくが、連続殺人鬼は翡翠を次の標的として狙っていた。
相沢沙呼『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』は、そんな奇妙な設定で物語が進む。SF作家のアーサー・C・クラークは「高度に発達した科学は魔法と区別できない」と語った。それに対し本作の場合、魔法でみつけた真相を科学的常識に適合するように理屈をひねりだす。いわば、論理が逆立ちしている。
本の裏表紙にも記されている通り「medium」には「霊媒」のほか「中間」、「媒介」という意味もある。翡翠はダイレクトに真相をつかんでしまうが、その真相に至るまでの「中間」の推理を香月が考え、翡翠と警察を「媒介」する役割を果たすというわけだ。
本来、謎解きを主眼とする推理小説は、合理的な内容であるべきだ。しかし、霊、超能力といった非合理なものを登場させつつ、超常現象がどのようなルールで起きているかを作中で示し、合理的な推理小説として成立させる手法もある。そうした特殊設定で書かれた推理小説は、本作も含め最近は少なくない。ただ、ここで作者はさらなるひねりを加えており、よくぞ仕組んだものだと思う。この驚きこそ魔法のようだ。
『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』講談社
相沢沙呼/著