半世紀以上も英国で愛され続けてきた2羽のフクロウの話

青柳 将人 文教堂 教室事業部 ブックトレーニンググループ

『イートン校の2羽のフクロウ』エクスナレッジ
ジョナサン・フランクリン/著 清水玲奈/翻訳

 

 

小さい頃に初めて見たフクロウ。そのしかつめらしい表情からは畏怖を、そして何か強い感情で訴えかけるような大きくて鋭い眼からは、人の言葉を理解しているのではないかと思わせる頭脳を併せ持つ存在に感じた。

 

けれど、どうしてだろうか。物語の中では知的で愛らしい生き物として描かれることが多く、次第にフクロウという動物の魅力に気づかされていった。
『ガフールの勇者たち』では多くの試練を勇猛勇敢に挑んでいく。『ハリー・ポッターシリーズ』では普段はペットとして愛でられながら、ホグワーツ魔法魔術学校と外界を繋ぐ渡り鳥のような役目を持ち、ハリー達の生活に欠かせない存在として共存していた。

 

音も立てずにサッと枝から枝へと飛び移り、静謐な森の中で神秘的な声音でホウホウと鳴き、ふかふかとした羽毛に埋もれてしまいそうな顔をクルクルと首を傾げるようにして回転させる、物語の世界ではとても身近な存在のフクロウ。その実態はとても繊細な生き物で、気軽に一般人がペットにして飼えるような動物ではない。

 

人の近くにいれば極度の緊張やストレスを感じ、時には死んでしまうことさえもあるという。

 

『ハリー・ポッターシリーズ』の大ヒットの影響もあって一時期話題になっていたフクロウカフェだったが、近年では動物虐待なのではないかと問題視され続けている。

 

「学問の象徴」、そして「幸運の鳥」と呼ばれて世界中で愛され続けているフクロウ。

 

そのフクロウについて書かれた本書は、著者の2羽の赤ん坊フクロウとの出会いから自然に返すまでを記録したノンフィクションで、1960年出版されて以降も世界中の人々に愛読されている。出版から半世紀経った2010年にはイギリスの「自然に関する本ベスト5」にもランクインされた。半世紀以上も前に書かれた本が、今も尚イギリスで読み継がれている。

 

著者はアマゾンの熱帯雨林の中に広大な農場を経営した経験を持ち、現在は貿易会社と建設会社を営む。

 

親鳥が猟銃の犠牲になり、取り残されてしまった赤ん坊フクロウがいるという友人の電話から物語は始まる。

 

当時13歳の著者・ジョナサンは、百貨店の人ごみの中に分け入って、鳥かごの中に入った2匹のフクロウと運命的な出会いを感じる。ジョナサンは2羽にそれぞれ「ダム」と「ディー」と名前を付け、イートン校(著者が通うロンドンの伝統校)で飼うことになった。最初は餌を与えるのも上手くいかず、とまどいを感じながらも、日に日に世話をすることに慣れていく。その飼育の過程を記した日記は、まるで2羽の親鳥のように愛情をかけて育てている少年の姿を想像するに容易い。そして随所にはさまれているジョナサンが描いた「ダム」と「ディー」のスケッチがコミカルで微笑ましくも愛らしい。

 

巻末にはジョナサンと2羽のフクロウの当時の写真が掲載されている。「ダム」と「ディー」が空を飛ぶ練習をする直前に撮影された写真や、自宅に連れてきた時にグランドピアノやフルートに乗せた写真から、ジョナサンがかけがえのない楽しい時間を過ごしていたことが垣間見られる。

 

当たり前のように珍しい動物がペットショップで販売されていたり、普段は動物園でしか見かけない動物がカフェで飼育されていたりすることも多いけれど、本来は自然に帰してあげるべき動物も実は数多く存在することが、時折ニュースで報道され、新聞やネットニュースの記事になっている。

 

ジョナサンは2羽のフクロウを飼い始めた時から、「親代わりに育てる」決意はしたけれど、決して「ペットとして飼う」つもりはなかった。どんなに可愛らしくて愛嬌があっても、最初から2羽を自立したフクロウとして自然に帰してあげることを目的にしていたのだ。

 

今までも、そしてこれからも人と動物の距離感について、この2羽のフクロウと少年の物語から学べることは多いのではないだろうか。

 

フクロウの生態系を学べるだけではなく、読書感想文やSDGsの学習にも最適なので、是非若い人たちにも読んで欲しい。

 

『イートン校の2羽のフクロウ』エクスナレッジ
ジョナサン・フランクリン/著 清水玲奈/翻訳

この記事を書いた人

青柳 将人

-aoyagi-masato-

文教堂 教室事業部 ブックトレーニンググループ

映画学校、映像研究所を経て文教堂に入社。王子台店、ユーカリが丘店、青戸店、商品本部を経て現在に至る。過去のブックレビューとしてTOKYO FM「まえがきは謳う」、WEB本の雑誌「横丁カフェ」がある。

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