詰め込みすぎないくらいがちょうどいい。鞄と心に余裕をもった旅支度

馬場紀衣 文筆家・ライター

『好きな場所へ自由に行きたい』
光文社 岡本敬子/著

 

 

鎌倉、鹿児島、東京、盛岡、そしてタイ、アメリカへ。旅好きの著者が、旅先でのワードローブや荷物のまとめ方を紹介しながら、現地での楽しみを綴った一冊。旅準備に必要なことが旅慣れしている人ならではの視点から語られ、説得力がある。なにより、この本とても役に立つ。

 

旅行の準備は、目的地やその土地の天気、どのように過ごす旅なのかなどを考えながら「宿泊数にあわせてバックパックを選び、荷物は最小限にまとめる」ことが大切だと著者は説く。服装にも気をつけたい。持っていけるワードローブに限りがあるからこそ、旅先での洋服は天候で決める。湿度、気温もかならず確認し、それに合わせてスタイリングする。きちんと着回せるかどうかも重要だ。旅先ではワンピースと羽織り、どちらにも使えるガウンが便利だという。薄いダウンベストやスヌードなど、旅の服は重ねられるものを選びたい。もちろん、アクセサリーも忘れない。

 

とはいえ、滞在が10日を超えると荷物も少し増える。夏の鹿児島にはサンダルを2足、水着も気分に合わせて2着ほどもっていく。天気が怪しい場合は雨具も持っていかなくてはいけない。で、これらをかばんに詰めていくのだけれど「暮らすように旅をする」そんなスタイルで心地よく旅を楽しむ著者は、旅先でも無理をすることはない。

 

たとえば携帯やお財布などすぐに取り出して使うものはサブバッグにいれておく。サブバッグは小さくたためて、かつシワが気にならないものを選ぶといいらしい。これがあれば旅先で急に荷物が増えたとしても安心だ。

 

 

「小さなバックパックになるべく荷物は少なく、身軽が基本」を掲げる著者の旅姿は、たとえ長期の旅行だとしても身軽で、自然体だ。

 

本書の読みどころのひとつは、けして日常リズムを崩さずにいつもの過ごし方を旅先でもするという点だ。たとえば化粧品のサンプルでもらったものを、ここぞとばかりに旅行先で使うなんてことはせずに、普段から愛用しているアイテムを持っていく。「これがあると落ち着く」そうしたものがあれば、いつもと環境の違う場所でも心と身体のバランスを保つことができるという。

 

「予定を詰め込まず、寝る時間はいつも通り、食べ過ぎたりもしません。あれもこれも…と考えず、出来なかったことは次回のお楽しみとしてとっておくくらいがちょうどいい」

 

荷物を少なくする。予定をいれすぎない。旅先だからと言って食べ過ぎない。旅の基本は日常のリズムを保つために何事も詰め込みすぎないこと。なるほど、旅から帰ってくるとひどく疲れたように感じる原因は「詰め込みすぎ」にあったのかと納得。次の旅行はこれを胸に留めて準備をしよう。

 

『好きな場所へ自由に行きたい』光文社
岡本敬子/著

この記事を書いた人

馬場紀衣

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文筆家・ライター

東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。

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