私らしい人生を生きるために星が教えてくれること

馬場紀衣 文筆家・ライター

『星2.0』 光文社 著/ yuji

 

PHOTO/TAKURO WATABE

 

人はなぜ生きるのか。おそらく多くの人が人生で一度は考えたことのあるテーマだろう。そんな問いを小説や映画のなかで見たことがある。私とはなにか。人生とはなにか。世界とはなにか。そんなことを何度も繰り返し考えながら、誰もがそれぞれのペースで人生を進んでいくのかもしれない。なぜ生きるのか、その答えがわからなくても、誰だって私らしい人生を生きたいものだ。星占いや占星術は、そうした人生の意味や真意を知るためのひとつの手段になることがある。

 

十二星座や星占いと聞くと、占いが当たっているかいないのか、そんな風にジャッジしたり、山羊座はストイックな頑張り屋さんとか、うお座はアーティスト気質で…など星座ごとに紋切り型の特質が語られることが多い。それはそれで面白いのだけれど、本書で取りあげられる星読みの世界はちょっとちがう。

 

各星座の特質と特徴が本書ではたっぷりと紹介されているのだが「(星は)何もジャッジしない、何も否定しない、ただそこに在るだけ」と著者が述べているとおり、その使いかたは読者にゆだねられている。それぞれの星座の才覚や癖、成功の秘訣や気を付けてほしいことまで記されているので、星占い本として使うのはもちろん、神話の世界と照らし合わせて読むのもいい。

 

そもそも宇宙には二元論的な思考はない。だから、占いには当たるも当たらないもないのだと著者は語る。そこには「宇宙の奏でるバイブレーション」があるだけなのだ。宇宙はそこに在るだけで、宇宙の側から人間に何かを求めることなどないというのが基本のスタンスだ。

 

いつの時代も人びとは星に導かれながら生きてきた。船乗りたちが夜空の星をたよりに自分の位置を確認した時代があった。星は、あるときには運命のガイドとして人類と共にあった。今では星を頼りにしなくても航路をみつけることができるが、代わりに自分たちの魂の居場所を見失いつつあるのではないか、著者はそのように語る。

 

著者はさらに「人は本来無限の可能性を持つもの」だと述べている。社会的な圧力や学校教育などで抑圧されてしまっている本質的な才能とパワーを解き放つお手伝いをするものだ、と。本書のテーマは、星を使い、自分が輝く術を知ること。星や占星術は本来のレールから外れてしまった魂をもとのレールに戻すためのツールなのだ。

 

『星2.0』 光文社 著/ yuji

この記事を書いた人

馬場紀衣

-baba-iori-

文筆家・ライター

東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。

関連記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を