情報は新鮮さが命 今の時代を生き抜く新ターゲティング思考

馬場紀衣 文筆家・ライター

『伝え方は「順番」がすべて 分単位のコミュニケーションが心を動かす』光文社 
小沼竜太/著

 

 

スマートフォンの普及により、私たちの生活は一変した。インターネットはすっかり身近なものになり、SNSの急速な普及で消費者の情報の受け取り方もこれまでとはまるで違うものになった。私たちはほとんどどいつもインターネットに繋がっている状態だし、生活に必要な情報はテレビや雑誌よりもTwitter やInstagramから入手しているなんて人もいるはずだ。かくいう私も、その一人。新しい化粧品の情報も、芸能人のスキャンダルも、巷で話題になっている情報のほとんどはSNSから手に入れたものだ。

 

情報の伝達速度が劇的に上昇したことで変化したことはほかにもある。価値ある情報が瞬時に拡散されるようになった一方で、情報の価値もまた急速に失われていくようになったのだ。

 

情報の主力がテレビや雑誌だった2005年までは、「雑誌に記事を載せて、翌週に公式サイトをオープン」するようなアクションプランニングが一般的だった。それがインターネットでの情報公開が一般的になった2006年頃から、情報の拡散から消費までのスピードはぐんと速まり「1日」単位で設計されるようになる。そして現在、SNSを通じて拡散された情報は一瞬で消費者に広がり、そして一瞬で価値を失うようになった。かつては「1週間」だったものが「分単位」で消費されるようになったのだ。

 

そこにあるのは、適切な強度をもって情報を公開しなければ、簡単に情報の海に沈んでいってしまうという現実である。

 

数々の人気ゲームのプロモーションに携わってきたプロの宣伝屋である著者は、今の時代を生き抜くための新しいプロモーションに重要なのは、「順番」だと語る。

 

現代の激しい情報の波を乗りこなすためには、情報価値が新鮮なうちに最大限の拡散をする必要がある。そうして消費者から得た「リアルタイム」のリアクションを「リアルタイム」にシェアすることが、今の世の中の当たり前なのである。

 

たとえばライブストリーミング(ネット生放送)などは、情報発信のタイミングを設定しやすいうえにWEBとの施策とも連携させやすくてとても便利な機能だ。こうした宣伝手段をTVCM、屋外広告、WEBメディアなどと組み合わせ、何をどの順番で行うのかに配慮しながら情報を発信することができれば、埋もれてしまいやすい情報に最大の効果を与えることが可能になるという。

 

著者は、伝えたい人を選んで情報を伝えることはもはや不可能な時代なのだと述べている。これまでのプロモーションが通用しなくなっているのだ。とはいえ、一億総メディア時代も悪いことばかりではない。日本でやっていることが、簡単に諸外国にも届けられるようになったのだから。「コンテンツへの愛、それを通じた友情は国境を越えて成立し得る」これもまた、今の世の中の当たり前になりつつある。

 

『伝え方は「順番」がすべて 分単位のコミュニケーションが心を動かす』光文社 
小沼竜太/著

この記事を書いた人

馬場紀衣

-baba-iori-

文筆家・ライター

東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。

関連記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を