2018/06/29
藤代冥砂 写真家・作家
『ロンメル進軍』思潮社
リチャード・ブローティガン/著 髙橋源一郎/訳
詩を読む習慣というのは、いいものだ。私は最近つくづく思う。
小学校や中学校の教科書の中にあった詩にはあまり馴染めなかったが、ある程度大人になって手にした詩の中に、その後の人生(大げさだけど)を動かす力があってくれて、本当に良かった。
何しろ、言葉というのはだいたい常に私たちの頭の中にあって、主に対する影響力たるや絶大だ。いわば心の血液みたいなもの。血液ならば、きっとサラサラな方がいい。濁っていたりしない方がいいはずだ。だから時々は車のオイル交換みたいに、言葉も洗う必要がある。私はそう思う。
言葉は言葉によって洗われる。なにやら警句みたいになってしまったが、良い詩を丁寧に何度も繰り返し読んでみれば、きっと分かる。洗われた言葉に満ちた心も、きっと洗われて綺麗になっているに違いない。
形ばかり整えられた言葉で他人と接することは行儀こそいいが、なんだかきまりが悪い。発せられた言葉が、その人の心とちゃんと繋がっているなと感じられる時、私はその人に安心と信用を感じる。
それは自分に対しても同じで、心語一致でいられる時は、自分を好きだなと思える。
で、詩を読む習慣というのは、お気に入りのサッカーチームを持っているように、お気に入りの詩人の、愛すべき詩をひとつぐらい持っていて、時々古本屋で一時間ぐらい立ち読みして、一冊買って帰るようなことである。
リチャード・ブローティガンの「ロンメル進軍」には、76篇の詩が収められている。どれもオリジナルの英語原文付きである。しかも翻訳は高橋源一郎さんである。私はきっとこの一冊をあと五年は手放さないと思う。
で、せっかくなので、収録されているブローティガンの詩をひとつ紹介。
タイトルは「死につつあるきみが最後に思いうかべるのが溶けたアイスクリームだとしたら」で、詩はこんな感じだ。
“そうだな
そういうのが人生かもな”
以上、とても短いのだ。まるで早死にした人の人生のようにだ。
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リチャード・ブローティガン「東京日記」平凡社
『ロンメル進軍』思潮社
リチャード・ブローティガン/著 髙橋源一郎/訳