深刻な農業被害をもたらすサバクトビバッタの問題を解決できるか?! ヤングバッタ博士の奮闘物語ふたたび。

竹内敦 さわや書店フェザン店 店長

『孤独なバッタが群れるとき』光文社新書
前野ウルド浩太郎/著

 

最初に言いたい。めちゃくちゃ面白かった! 本書はあのベストセラー『バッタを倒しにアフリカへ』の前日譚です。

 

「バッタを〜」もすこぶる面白かったけど、こちらはよりアカデミックで知的好奇心が刺激されたし、アフリカに行く前に前野さんが激しくもアイデア溢れる研究をしてきたかがわかり、若手研究者の助走成功物語としても興奮させられます。

 

ザクッと話すと、前野さんはサバクトビバッタの研究者です。サバクトビバッタはたまに大発生して作物を食い尽くすという世界的な大被害をもたらします。世界の大問題を解決してやるぜとアフリカに渡り悪戦苦闘する、そんな冒険じみたフィールドワークをユーモアたっぷりに笑わせながら読ませるのが『バッタを倒しにアフリカへ』です。科学者のおもしろエッセーでバカ売れしました。

 

秋田県への帰省ついでにさわや書店でトークイベントをやってもらいました。北東北の者として誇らしかったです。それからは「サバクトビバッタの被害を解決」というニュースがいつ来るかと待ち遠しかったです。前野さんの新刊の知らせにワクワクして、ついにか?と思ったら他社から出ていた前著の新書化ときいて正直少し肩透かしでした。それでもなんと「呪術廻戦」の芥見先生推薦帯で即買いしましたが、最近まで積ん読してましたスミマセン。

 

ようやく読んだら、夢中になりました。「バッタを〜」に比べたら研究成果などの説明が多く真面目な内容。真面目に研究してる内容です。前野さんを見直しました。運よくアフリカに研究職を得た変人科学者だと思ってました。ごめんなさい。本当は若くして有望な論文をバシバシ発表していたエリート研究者なんですね。内容の面白さ以上に、ちゃんとした科学者っぽさに驚愕でした。見直しました。ごめんなさい。

 

いまさら紹介する理由はそういうことです。もし「バッタを〜」を読んでこれは未読という人がいたら、面白さ保証するから読んでみてください。中盤の定説を破壊していくさまはバッタ界のコペルニクス。むやみにバッタに詳しくもなれます。もしかしたらこの結果とあの結果を組み合わせたら問題が解決するのではと、あなたがひらめくかもしれません。どちらも読んでない人は、ああ、うらやましい。楽しい読書体験がまだあります。

 

『孤独なバッタが群れるとき』光文社新書
前野ウルド浩太郎/著

この記事を書いた人

竹内敦

-takeuchi-atsushi-

さわや書店フェザン店 店長

声に出して読んだら恥ずかしい日本語のひとつである「珍宝島事件」という世界史的出来事のあった日、1969年3月2日盛岡に生まれる。地元の国立大学文学部に入学し、新入生代表のあいさつを述べるも中退、後に理転し某国立大学医学部に入学するもまたもや中退、という華麗なるろくでもない経歴をもって1998年颯爽とさわや書店に入社。2016年、文庫のタイトルを組み合わせて五七五を作って遊んでいたら誰かが「文庫川柳」と名付けSNSで一瞬バズる。本を出すほどの社内のカリスマたちを横目で見ながら様々な支店を歴任し現在フェザン店店長。プロ野球チームでエース3人抜けて大丈夫か?って思ってたら4番手が大黒柱になるみたいな現象を励みにしている。

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