プロレスマニア書店員が『Number』編集者と場外乱闘!(前編) プロレスとは「人生をアートすること」である
市川淳一『ぼんくら書店員のぼんくRADIO』

■プロレスをやるだけじゃプロレスではない

 

寺島 ちょっと気圧されたと思いますけど。すごく、よくわかりますよね。プロレスをやるだけじゃ、プロレスじゃないんです。アリとやるときには。

 

市川 そう、そう。

 

―なるほど(笑)

 

寺島 そこを裏切るのが、猪木の天才的なところなんですよね。

 

市川 やっぱりね、プロレスって、ただただリング上で戦っていても、やっぱりファンは喜ばないんですよね。やっぱりそこにイデオロギー、思想がないと。

 

―ストーリーだとか、リング外でのあれこれが、因縁とかがあったほうがたぶん、いいっていうことなんですか。でもない?

 

市川 因縁っていうか、「自分のプロレスはこうだ」っていう主張がないと、ファンってやっぱり盛り上がらない。

 

―たとえば、お前のプロレスはプロレスじゃないとか思っているやつもいるし、みたいなね。

 

市川 そう、そう。古参のファンってやっぱり、あんまり好きじゃない人が多いのかな?棚橋選手が昔、僕はエクステしてプロレスやりますって言ったんですよ。ああ、やっぱりこの人、すごいなと思って。エクステをしてプロレスをするっていう思想信条って、古参のファンからしてみたら「ええっ、エクステしてプロレスすんのかよ」って思うじゃないですか。そこで対立概念を生み出しているんですよ。エクステをするだけなんですよ。

 

―エクステをしているやつはけしからんみたいなことなんですか。

 

市川 そう、そう。

 

寺島 というか、古参のファンはエクステなんてものを知らない。

 

―そうか、エクステってなにって。

 

寺島 エクステ自体を知らないですよ。もう、そこに突っ込んでいくっていうのはすごいです。

 

市川 そう。だから僕、棚橋選手も、確実に猪木プロレスの影響を受けていると思うので。「えっ、エクステすんの!?」って、思うじゃないですか。これがね、プロレスの本当の面白さなの。

 

―なるほど。「人生をアートする」っていうのは、それはいい言葉ですね。

 

■人間はプロレスから逃れられない

 

市川 ただですね、こういう、要はアリと真剣勝負をする、プロレスとは最強の格闘技であるって、猪木がうたっちゃったためにですね、その後のプロレスラーとプロレスファンはですね、大変しんどい思いをするようになって。

 

―そのせいで、なにか悪いこと、いやなことがあったんですか?

 

市川 だって、高橋さんがプロレス好きじゃないっていうことは当然、プロレスファンの友だちがいたら、何て言っていったんですか?

 

―ファンの友だちもいなかったので、直接言ってないですけど。テレビとか、チラチラ流れたりとか何かするたびに、「いや、茶番だよな」って。

 

市川 おい、おい、おい(笑)

 

寺島 これはあれですよ、イデオロギー闘争。

 

市川 イデオロギー闘争ですよ。

 

寺島 これがプロレスですよ。

 

―だって、別にあおるわけじゃないですけど、だってスポーツじゃないじゃないですか。

 

市川 おい、おい、おい。

 

寺島 違いますよ。プロレスはね、キング・オブ・スポーツですから。

 

―(笑)

 

市川 そこはいいんじゃないの(笑)。違うんです。でも、高橋さん。これ、今そうやって言っているじゃないですか。あなたはそこで、もう負けているんですよ。

 

―いや、いや(笑)

 

市川 なぜかわかりますか。

 

―わからない(笑)

 

市川 僕らと、プロレスをもう、しちゃっているんですよ。

 

―それ、ずるくないですか、なんか(笑)

 

市川 ずるくない、ずるくない(笑)。これがプロレス。プロレスってだって、ずるいもんだもん。ここでもう、僕らはプロレスをしているんです。

 

―すごい詭弁みたいになってきましたけど(笑)

 

寺島 高橋さんはもうすでにリングに上がってるんです。

 

―すでにリングに上がってしまっているんですね。

 

市川 いま、上げてしまいました、僕。

 

寺島 われわれの問いに答えることで、もうすでにリングに上がっているっていう。自覚なしに。

 

―これは、プロレスしたくない場合はどうすればいいんですか。

 

市川 それはもう、だからプロレスからは逃れられない。

 

―(笑)プロレスから、人間は逃れられないんですね。

 

市川 逃れられないです。

 

寺島 まず、この企画が通った時点でもう、逃れられないです。

 

市川 ここは今、リングになっています。

 

―すでに、ここがリングなんですね。

ボンクラ書店員のぼんくRADIO

ぼんくら書店員・市川

「『竜馬がゆく』と『燃えよ剣』の出版社の違いが分かる」を理由に、自信満々で某チェーンにアルバイトとして入社し10年が経過。光栄のゲームの武将パラメータを眺めながら、歴史小説を読むのが日課のボンクラ書店員。たまに本の帯やポップをデザインしたり、小説の巻末に漫画を描いたりしています。1981年神奈川生まれのAB型。
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