akane
2019/10/23
akane
2019/10/23
寺島 ちょっと気圧されたと思いますけど。すごく、よくわかりますよね。プロレスをやるだけじゃ、プロレスじゃないんです。アリとやるときには。
市川 そう、そう。
―なるほど(笑)
寺島 そこを裏切るのが、猪木の天才的なところなんですよね。
市川 やっぱりね、プロレスって、ただただリング上で戦っていても、やっぱりファンは喜ばないんですよね。やっぱりそこにイデオロギー、思想がないと。
―ストーリーだとか、リング外でのあれこれが、因縁とかがあったほうがたぶん、いいっていうことなんですか。でもない?
市川 因縁っていうか、「自分のプロレスはこうだ」っていう主張がないと、ファンってやっぱり盛り上がらない。
―たとえば、お前のプロレスはプロレスじゃないとか思っているやつもいるし、みたいなね。
市川 そう、そう。古参のファンってやっぱり、あんまり好きじゃない人が多いのかな?棚橋選手が昔、僕はエクステしてプロレスやりますって言ったんですよ。ああ、やっぱりこの人、すごいなと思って。エクステをしてプロレスをするっていう思想信条って、古参のファンからしてみたら「ええっ、エクステしてプロレスすんのかよ」って思うじゃないですか。そこで対立概念を生み出しているんですよ。エクステをするだけなんですよ。
―エクステをしているやつはけしからんみたいなことなんですか。
市川 そう、そう。
寺島 というか、古参のファンはエクステなんてものを知らない。
―そうか、エクステってなにって。
寺島 エクステ自体を知らないですよ。もう、そこに突っ込んでいくっていうのはすごいです。
市川 そう。だから僕、棚橋選手も、確実に猪木プロレスの影響を受けていると思うので。「えっ、エクステすんの!?」って、思うじゃないですか。これがね、プロレスの本当の面白さなの。
―なるほど。「人生をアートする」っていうのは、それはいい言葉ですね。
市川 ただですね、こういう、要はアリと真剣勝負をする、プロレスとは最強の格闘技であるって、猪木がうたっちゃったためにですね、その後のプロレスラーとプロレスファンはですね、大変しんどい思いをするようになって。
―そのせいで、なにか悪いこと、いやなことがあったんですか?
市川 だって、高橋さんがプロレス好きじゃないっていうことは当然、プロレスファンの友だちがいたら、何て言っていったんですか?
―ファンの友だちもいなかったので、直接言ってないですけど。テレビとか、チラチラ流れたりとか何かするたびに、「いや、茶番だよな」って。
市川 おい、おい、おい(笑)
寺島 これはあれですよ、イデオロギー闘争。
市川 イデオロギー闘争ですよ。
寺島 これがプロレスですよ。
―だって、別にあおるわけじゃないですけど、だってスポーツじゃないじゃないですか。
市川 おい、おい、おい。
寺島 違いますよ。プロレスはね、キング・オブ・スポーツですから。
―(笑)
市川 そこはいいんじゃないの(笑)。違うんです。でも、高橋さん。これ、今そうやって言っているじゃないですか。あなたはそこで、もう負けているんですよ。
―いや、いや(笑)
市川 なぜかわかりますか。
―わからない(笑)
市川 僕らと、プロレスをもう、しちゃっているんですよ。
―それ、ずるくないですか、なんか(笑)
市川 ずるくない、ずるくない(笑)。これがプロレス。プロレスってだって、ずるいもんだもん。ここでもう、僕らはプロレスをしているんです。
―すごい詭弁みたいになってきましたけど(笑)
寺島 高橋さんはもうすでにリングに上がってるんです。
―すでにリングに上がってしまっているんですね。
市川 いま、上げてしまいました、僕。
寺島 われわれの問いに答えることで、もうすでにリングに上がっているっていう。自覚なしに。
―これは、プロレスしたくない場合はどうすればいいんですか。
市川 それはもう、だからプロレスからは逃れられない。
―(笑)プロレスから、人間は逃れられないんですね。
市川 逃れられないです。
寺島 まず、この企画が通った時点でもう、逃れられないです。
市川 ここは今、リングになっています。
―すでに、ここがリングなんですね。
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.