akane
2018/09/27
akane
2018/09/27
I:さて、またまた脱線してしまいましたが、酒見先生の『泣き虫弱虫諸葛孔明』の説明を。
口喧嘩無敗を誇り、いじめた相手には得意の火計(放火)で恨みを晴らす―なんともイヤな子供だった諸葛孔明。奇怪な衣装に身を包み、宇宙の神秘を滔々と説いて人を煙に巻くアブナイ男に、どうしてあの劉備玄徳がわざわざ「三顧の礼」を尽くしたのか?新解釈にあふれ無類に面白い酒見版「三国志」。
I:相当、新解釈にあふれています(笑) そして無類に面白い。
T:冒頭からすごいワードが続々と出てきているのですが……。孔明って、相当やばい奴なんじゃないですか?
I:ちなみに泣き虫弱虫という言葉は、内容とあんまり関係ないです。
T:たしかに、いじめられた相手に放火するくらいだから弱虫でもなんでもない。
I:どうしてこういうタイトルなのか? 謎は深まるばかりです……。
T:これも作品の一つの謎ということで、読者に読み解いていただきましょう(笑)
I:この作品ですけれども、三国志にまつわる日本の特殊な環境、つまり「なぜ三国志という中国の一時代に日本人がこれだけ熱狂しているのか?」という観点も織り込まれています。そういうメタ的な視点が入っている。
T:日本における三国志の受容のされ方も含まれていると。
I:そうです。だから三国志を知らない人にとっても興味深いし、詳しい人はより奥深く読むことができるのではないでしょうか。とても面白い作品です。
孔明といえば劉備がセットで語られるわけですけど、一般的な劉備の印象って「人望が厚い正義の味方」ではないでしょうか。
T:詳しくないですけど、なんかカッコいいイメージはあります。
I:ただ、司馬遼太郎さん曰く「劉備とは、元手もないのにギャンブルをやって身ぐるみ剥がされる奴」。他にも歴史家さんの中で「おかしいだろ!」という声も多々上がるくらい、かなり胡散臭い人物です。
そんな劉備ですが、『泣き虫弱虫諸葛孔明』の中では、ある独特の言語を使っております。
T:独特の言語とは?
I:例えばですが「ムフフ」とか「ダハハ」というようなフレーズを多々使っています。
T:それは笑い声ということですか?
I:そうです。これですね、完全にね、アントニオ猪木なんです。
T:ええっ!?そうなんですか?
I:はい。作品の中で劉備は「魔性の男」という風に表現されるのですが、魔性といえばアントニオ猪木。魔性のスリーパー。魔性のスリーパーはここでは関係ないですけど(笑)
とにかく、劉備をアントニオ猪木に見立てている。これ、プロレスファン的には「なるほどね!」となります。
T:スッと腑に落ちる感じなんですか?
I:そうですね。司馬さんの評にもありますけど、劉備って本当はとにかく人を裏切りまくっている。自分の命欲しさに我が子を投げ捨てるような卑劣漢なんですが、なぜか人望があり、みんなが慕ってくる。
T:スターってことですか?
I:そうですね、カリスマ。で、アントニオ猪木もそういう傾向が多々ありまして……(笑)
弟子に理不尽な要求をしたり、無茶苦茶な演出をして客が暴動を起こしたり、それでもファンは支持し続ける。
T:(笑)
I:僕はプロレスファンなので間違えてほしくないんですけど、学生時代にアルバイトをしてアントニオ猪木のDVDボックス(6万円)セットを買うくらい好きなんで!石坂浩二さんが描いた猪木VSアリの復刻版ポスターも部屋に貼ってありますよ!(ドンッ)。
T:筋金入りのファンから見てもそういうことだと。disっているわけではなく。
I:そういうところもひっくるめて大好きなんで。
という風な感じで、自由な発想で三国志世界を解釈している作品なんです。
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