akane
2019/12/27
akane
2019/12/27
小春日和の12月初旬、浅川あやさんの新居を訪ねました。あやさん、そして真さん、楽くんの待ち望んだ新居への引っ越し。それが家族にとってどんなに嬉しいことであるかは、この連載の読者ならおわかりのはず。
家づくりを、できるだけ自分たちが参加して行う。このシンプルな欲求を満たすことは、予想以上に大変であるのだと取材をとおし知りました。あやさんが最初に語っていた「家づくりという冒険をはじめる」が、言葉どおりであったことを、一年以上が経過した今、しみじみと思い出します。
「棟上げのときも感慨深かったのですが、そこからがホントにいろいろあって・・・。落ち込むような場面もありましたが、その度に家族と現場監督である建築士さんと励まし合いながら乗り越えてきました」
いろいろあった。そのことについては掻い摘んで記してきました。語れる範囲のこと、書いて残した方が読者の役に立つこと。でも、当事者のあやさんには、それだけではない思いがあるのは察するに余りあります。実はあやさん、引っ越しを終えると直ぐに、疲れが出て暫く寝込んでしまったのです。
「今もまだ工事は続いています。完全なる完成ではないのが現状ですが、とにかく家族みんなで、両親も呼び寄せ暮らし始めることができた。それがとにかく嬉しいです。仮住まいというのは、仮に住んでいるわけですから、地に足が着いていないんですよね。“取り敢えず“で日々が進んでいく、その状態では暮らしを楽しむなんて殆どできない。子どもとの楽しみは何とか確保してきましたが、今思うと、私にとってはかなりのストレスであったなと」
外周りと、ショップ「日用美」の工事はこれからが本番。毎日、職人さんや大工さんが家の外で作業をしているけれど、なにはともあれ、家のなかは既にあやさんらしいインテリアで彩られています。今回は、出来たばかりの室内を拝見することに。
「この家のテーマは “外に居るように暮らす“ なんです。元々雑木林のような土地ですから、竹をはじめ樹木はふんだんにあります。だからテラス側は一面大きな窓にして、その木々に囲まれて暮らす気持ち良さを存分に味わえるようにしました。テラスとリビング&ダイニングは一続きですし、壁で仕切らずワンフロアにすることで、一日中どこからか陽が射し込むように設計しています」
小高い丘の上にあるのは浅川邸一軒だけという贅沢さ。木々に囲まれていることで町中にあるとは思えない静けさと、豊かな自然を感じさせます。最初にこの土地に案内されたとき、私の目に映ったのは鬱蒼としたジャングルのような場所。こんな自然と一体化した住まいが出来るとは想像できませんでした。でも、あやさんの頭のなかには今の姿がしっかりと描けていたのです。
そして、2階も1階から臨めるオープンスペースとなっています。1階から眺めると、壁一面の本棚がさながらアートピースのようです。
「2階は趣味のためのスペース。ここは夫が最も楽しみにしていたんです。本と楽器をメインに楽しむ場所になっています。仕事から帰ってくると、真っ先にここで楽器を奏でるのが彼の日課となっています(笑)」
この本棚の後ろに左右に分かれた部屋があり、片側が寝室、もう一方が楽君の部屋になっています。ご両親の部屋は玄関から直ぐの場所に和室を設えました。キッチンや、バス、トイレなどへの動線がスムーズで、高齢になっても暮らしやすい配慮があります。
それから、あやさんが多くの時間を過ごすキッチン。鎌倉の家のときもアイランドキッチンで、ダイニングやリビングにいる人と会話できる距離感であることは同じです。ここでも器は棚に並べられ、ザルは壁に吊すなど、道具たちがそのままオブジェとして生かされています。いつも使うものをいい加減に選ばす、自分の趣味に統一することでインテリアのアクセントにするテクニックはさすがです。
「台所で使うものは、店で扱っている作家さんのものが中心です。ひとりひとりの顔を思い浮かべながら使うことは、台所仕事の楽しさに繋がっています。実際に使うことで、お客様に具体的なアドバイスなどもできますし」
あやさんの真骨頂でもある暮らしを楽しむこと。新しい家で、それが、また少しずつ進化しているのがわかります。
「これからは庭での作業が楽しみです。春に向けて、いろいろ計画を練っているところ。ご近所の楽の友達も、毎日のように遊びに来ます。家の周りで出来る遊びも工夫したい。冬の楽しみは焼き芋ですね~」
次回は、外周りのことをお伝えできそうです。
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