恐怖の飲み会【第5回】
辛酸なめ子『新・人間関係のルール』

飲み会を途中で帰りたい時の言い訳テク

 

「今年は忘年会は内々で開催したんです」
毎年呼ばれていた忘年会に誘われなくて、こんな風に告げられることが多くなってきました。以前、さんざん飲み会から途中で帰るにはどうすれば良いか書いていたのが、周りの友人・知人に漏れ伝わってしまったのでしょうか。

 

その時は、「生ものを持っているから早く帰ります」と言い訳するとか、仕事の電話がかかってきたフリをして外に出るとか、少しずつ荷物やコートを入口付近に移動させてトイレに行く体でサッと出るとか、拙案を提案させていただきました。

 

そして最近、「健康美塾」(第一三共ヘルスケア)で飲み会事情を調査。“飲み会を途中で帰りたい時の言い訳“を20~30代の女性に聞いたところ

 

「明日朝早いから」「職場の人に呼ばれた」「終電が近いんで」「主人がうるさいから」といった言い訳テクが集まりました。やはり仕事や終電などを言い訳にするのがオーソドックスです。

 

中には「いつの間にかいなくなる」人や、「うとうとして眠いふりをする」という演技派の人もいました。たしかに眠いふりをすると「帰っていいよ」ということになりやすいです。このテクは気付きませんでした。

 

ただ、それはある程度人数が多い場合、できる行為だと思われます。敵も去るもの(と、飲み会に誘ってくれた人を敵呼ばわりするのもどうかと思いますが)、少人数の飲み会だとどうしても帰らせまいとする人がいたりします。

 

「明日早いんで」と言ったら「何時? 私は6時だけど」ともっと早い時間を言ってきて帰らせない空気にするとか。美魔女的な人に多いような印象です。

 

ここ最近体験した、スリリングな飲み会についてご報告させていただきます。

 

ある美女を囲む5人の飲み会で

 

ある美女を囲んでの5人での飲み会。オーガニック料理のおいしいお店で最初は和やかに飲んでいたのですが、途中から空気がおかしくなってきました。

 

あまりお酒に強い人がいなかったからか、美女が不機嫌になってきました。

 

「つまらん!」と文句を言い出し、「なんでみんな飲まないの?」と不満を表しました。

 

「明日早いんです」と言うと、「私も明日6時半に息子を起こさないと」と、他の人が言い逃れできない雰囲気に。

 

お酒に強い人は体力も人一倍あるので、夜遅くなっても大丈夫なのです。睡眠時間が減ると次の日廃人状態になってしまう人の気持ちはわかってくれません。

 

「テキーラ1、2、3、4、5!」と彼女は勝手に人数分のテキーラをオーダー。幸いお店にはテキーラがありませんでした。すると彼女は
「短時間でみんな楽しくなってあとに残らないお酒ある?」とお店の人に聞いていましたが、結局思い当たらなかったようでした。軽めのカクテルを頼んでなんとか納得してもらいました。

 

「みんな飲もうよ! 1人飲んでる人がいたら全員飲まないといけない法律を作って欲しい」
とか無茶なことを言い出したり、「つまらん!」とたびたび連呼。

 

その中に、車で来ていた人もいたのですが、飲まないまま「そろそろ駐車場が終わる時間なので……」と帰ろうとしたところ、彼女は
「今日ここにおいてタクシーで帰れば。駐車場代は払うから」
と、なんとか引き止めていました。経済力がある美魔女に逆らえる人はいません。申し訳ないですが、体力的に23時頃失礼させていただくことに。そうすると帰り際に
「つまらなかった?」と言われてしまい、恐縮。

 

それ以来、飲み会に誘われることはなくなってしまいました。一抹の淋しさが残ります。心のどこかでスリルを求めていたのかもしれません。

 

美魔女の下ネタ炸裂

 

最近は、別の美女を囲んでの仕事がらみの飲み会で、またちょっと緊張することがありました。というか、守護霊が行くのを引き止めていたのかもしれません。

 

まず、前の仕事が押して、飲み会の開始時間に遅れることに。さらに急に靴の調子がおかしくなり、右足にはいていた靴が3歩歩くごとに脱げるようになってしまいした。駅でたびたび脱げて前に進めません。しかも駅に着いてからなぜか反対方向に進んで迷いまくりました。お店に到着したのは21時近くに……。

 

「遅くなってすみません」とお店に入ると、不穏な空気が漂っていました。遅れたせいかと思ったら、どうやらその女性が説教キャラで、私が来るまで二人がかなりキツく説教され続けていたようでした。

 

「これから心を入れ替えます。指摘してくださってありがとうございます」と説教された方は人間ができている発言をしていましたが、どこか不自然な緊迫感が。

 

「言いたいことは言ったから」とすっきりした女性は、今度は下ネタキャラに豹変。途中で「全然わかってない!」と私も説教されかけたのですが、むしろ説教の方が良かったかもしれません。

 

それから、美女は周りに聞こえるようなボリュームで、最近出会った男たちとの情事を語り出しました。

 

「気付いたら背後から硬いモノを押し付けてきて……」
「セックスが下手な男と付き合ってもメリットがない。そうでしょ?」
「私の体をまさぐるだけまさぐって……」

 

さらに女性器の部位の名称まで発していて、下ネタは大丈夫な私もさすがに引きました……。

 

美魔女の下ネタを聞いていると、エネルギーが吸い取られるようで、一次会で失礼させていただくことに。あとの三人は二次会に行っていました。妙な魔力に引き寄せられたのでしょうか。私の方は、何か瘴気にやられたのか、帰ってから異様な吐き気に襲われ、次の日もダウンしていました。守護霊様が止めてくれようとした意味がわかりました。

 

でも、しばらくして参加者に会ったら、酔っていてその日のことは全く覚えていない上、「あれ? 最後までいなかった?」と一次会で帰ったことも認識されていなかったようです。

 

ここでわかったのは、参加者が悪酔いして次の日記憶がないくらいの飲み会は、途中で帰っても全然OK。ということです。むしろ自分の心身を守るためには、早めに姿を消すのがおすすめです。どうせ誰も覚えていないので……。

 

お酒は、ディープに飲んだ人同士が潜在意識下でつながる媒介なのかもしれません。

 

【今月の教訓】
飲み会に参加する前にトラブルが起こったら、行かない方が良いというサイン。

 

新・人間関係のルール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)

1974年東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など多数。
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