同窓会に挑む【第2回】
辛酸なめ子『新・人間関係のルール』

数年に一度の晴れ姿?

同窓会にはどういう気持ちで挑むのが良いのでしょう?
「挑む」という動詞自体が間違っているのかもしれません。中高時代は自然体で接していたのに、年数が開くと、つい充実している風に虚勢を張りたくなってしまう……。

 

数年間に一度の自分の晴れ姿を見せなければ、という思いにかられます。そして、無駄に服やバッグを新調したりして気合いが空回りして、ますます挙動不審になってしまうのです。女子校の同窓会でもそうなのだから、昔好きだった人とがが出席しそうな共学の場合は、さらに気合いが入りそうです。

 

最近、中高の同窓会の集まりが何度かありました。同窓会では自分を見失いがちです。他のクラスメイトのように家庭を持ったり安定していない、という引け目があるからかもしれません。落ち着いて堂々としている同窓生を前に劣等感を感じてしまいます。

 

今年の同窓会での反省点を思い返してみます。

 

プチトラブルが発生する

 

自分を見失いかけているからか、注意力や防御力が散漫になって、ちょっとしたトラブルに見舞われがちです。
例えば、新調した靴で激しい靴擦れが発生し、楽しく談笑するどころではない、とか。気合いを入れてレンタルしたブランドバッグを汚してしまい、パニックになりかける、とか。服にシミをつけてしまう、寝癖が治らない、などを体験しています。

 

そんな醜態を人に見られたらどうしよう、とさらに焦りにかられます。実は誰もそんなに人のことを見ていない、と冷静になるしかありません。

 

席が遠くて聞こえない

 

会場が広かったり、テーブルが大きいと、盛り上がっている人たちの会話に入りたくても入れない、ということが起こりがちです。加齢で耳が遠くなったのかと心配になります。

 

先日も、同窓会の部活仲間の集まりで、会話が断片的にしか聞こえず、「豚しゃぶ」「かき氷」「淡谷のり子」などといったワードをかろうじて聞き取ることができて、「えっ何?」と何度も聞き返す羽目に。会話の流れを分断してしまいました。読唇術でも身につけていれば良かったのですが……。

 

フェイスブックに入ってない

 

大人の場合、フェイスブックに入っている率が高く、小規模な同窓会の告知などはそこで行われることが多いので、入っていない私などは後から知ることが多いです。また、先日の同窓会の記念写真はフェイスブック上にアップされたらしく、入っていないのでページにたどり着くこともできませんでした。同窓生と積極的に絡んでいくためには登録した方が良さそうです。いっぽうで、無理に昔の縁をつなぎ止めず、自然に縁が切れるのが良いという考え方もありますが……。

 

LINEの登録で手間取る

 

こちらはアラフォーあるあるかもしれません。LINEをそこまで使いこなせていないので、久しぶりに会った同級生とつながろうとしても、友達登録に手間取りがちです。焦るほどQRコードの出し方がわからなくなる現象が。また、グループLINEを作ろうとして複数も作って招待してしまったり。お互いの年齢を感じる習慣ですが、登録できたときの達成感はひとしおです。

 

数年に一度の会話はダメージ大

 

何年かに一度しか会えないのに、会話がうまくできないことがよくあります。もしくは予想外の厳しい一言に動揺して引きずってしまったり。

 

同窓会会場で所在なく立っていたら、ひとりの同級生に「また人間観察してるの?」と声をかけられ、そんな感じ悪い人間に思われていたとは、と、ショックでした。しかし数年ぶりの会話なので穏便に、笑ってお茶を濁しました。同窓会での会話は重みがあるので注意が必要です。

 

華やかな女子に話しかけてスルーされる

 

何十年の前のヒエラルキーは転生しない限り続いているのでしょうか。華やかで中心にいるタイプの人に「何かあったら誘って」と言ったら、軽くスルーされ、しかも話しかけたときの自分の口調を思い出してあとから自己嫌悪に。あとは、活躍している美女などに気後れして自分から声をかけられず、そっと隠し撮りしてあとで同じ場所にいた余韻に浸る、という不審な行為もしてしまいがちです。

 

名前を忘れる、忘れられる

 

昔、「同窓生カルタ」という同窓生の名前を忘れないためのカルタを作って(卒業アルバムをコピーして札にする)、練習していたことがありました。でも卒業して20年以上経つと、見た目や名字が変わってしまっている人も。記憶力が悪いながらも、なんとか下の名前やニックネームだけでも思い出したいです。先日は、会が始まって一時間半後に、誰だかわからなかった人の名前を思い出すことができました。

 

いっぽうで、自分が名前を忘れられると、新鮮な衝撃がありました。当時華やかなグループにいた美女に、帰り道話しかけたら、「あの、名前は……?」と聞かれて軽く動揺。名前を言ったら思い出してくれたようでした。このような反応があると初心に戻ることができます。自分は名前を忘れても、人に忘れられるのはイヤ、というのは自分勝手でした。

 

同総会で緊張を和らげるには

 

同窓会での人間関係は、自分の原点のようなもの。挙動不審になってしまうのは、多分当時の自分が同じくらい挙動不審だったからだと気付きました。一時的に年齢退行しているのかもしれません。同窓会はタイムスリップ感があります。

 

同窓会での緊張を和らげるには、頻度をもっと高めれば良いのかもしれません。数ヶ月ごとに開催すれば、ありがたみもなくなりますが、もっと自然に振る舞えそうです。

 

多感な時期に一緒に過ごした学友は、何十年も縁が続くと、ほとんどソウルメイトみたいなものです。まじめで頭が良い同級生が着実に人生を歩んでいる姿を見ると、この人たちは絶対道を踏み外すことはなさそう、とゆるぎなさに安心します。同窓生をリスペクトし、運命共同体のような気持ちで、彼女たちの幸せを自分のことのように受け止められれば良いのかもしれません。

 

私としては同窓生に恥ずかしくないように、母校に泥を塗らないように気を付けていきたいです……。

 

【今月の教訓】
同窓会では初心に戻り、人よりも自分の心を観察する。

新・人間関係のルール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)

1974年東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など多数。
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