秋なすは、大事な人に食べさせたい。シンプルだけどびっくりするほどおいしい調理法【親ごはん第8回】
枝元なほみの親ごはん

私、この間ふと「あー、車椅子押したいなあ。」って思ったんですよ。自分でもびっくりしちゃった。なんか父のことを思い出す前に、「車いすを押したい」っていう気持ちがむくっと浮き上がってきた。

 

今、介護に大変な思いをしている方にしたら、ええって感じかもしれないと思いつつ、なんだか車椅子に乗った父と過ごした時間が無性に懐かしくなったのかもしれません。

 

私の小さな車に折りたたんだ車いすを乗せると、後ろ座席の背もたれは前に傾いた状態で、そこに座る義妹には苦労をかけたけど、助手席に乗る父は「気をつけてよ」とか、「車間距離が近いよ」とか、「前の車は新しい」などと言ったり、ナンバープレートの数字を足したり引いたり語呂合わせを考えたりしながら、終始ご機嫌なのでした。

 

椿の咲く頃、深大寺の植物公園に父を連れ出しました。妹と交互に車椅子を押しながら、のんびり歩きまわっているうちに、いつの間にか父が妹と私の言葉を真似て「ああ綺麗だねえ」「この花を見てごらん」なんて言うようになって。私と妹、密かに泣いたんでした。

 

ああ、車椅子押しながら公園に行きたいなあ。こんな風に思う日が来るなんて思わなかったなあ。

 

「焼きなす」

■材料(2~3人分)
なす           4本
しょうが(すりおろし)  1片分
めんつゆ(3倍濃縮タイプ)  大さじ2
水            大さじ1~2
かつおぶし        適宜

 

【1】なすはガクの下をくるりと剥きとって縦に1~2本切り込みを入れ、魚焼きグリルで約10分を焼く。途中1~2回上下を返す。【2】取り出して紙袋などに入れて粗熱をとり、皮をむく。ガクを切り落とし、長さを半分に切って、食べやすいように縦に裂く。

 

 

【3】皿に盛り、水で薄めためんつゆをかけてしょうがをのせる。好みでかつおぶしを散らす。

 

 

「揚げなす」

■材料(2~3人分)
なす           4本
玉ねぎ          1/4個
<A>
ポン酢しょうゆ      1/4カップ
みりん          大さじ2
蜂蜜(好みで)      小さじ1
揚げ油          適量
塩、酢          各適量

 

 

【1】なすはガクを切り落として一口大の乱切りにする。ボウルに入れて塩大さじ1、水4カップ(ともに分量外)を加え、浮き上がらないように落としぶたをして3~4分おく。ざるに上げて水けを布巾で抑える。

 

【2】玉ねぎは薄切りにする。酢大さじ1、水3カップ(ともに分量外)を入れたボウルに2~3分放して水け切る。

 

【3】鍋に揚げ油を180度に熱してなすをツヤやかになるまで3分ほど揚げ、引き上げる。

 

 

【4】フライパンにAを入れてじゅわじゅわっと煮立て、【3】のなすを加えてからめる。玉ねぎを加えて混ぜ、冷ます。

 

枝元なほみの親ごはん

料理家 枝元なほみ

撮影/キッチンミノル
取材・文/高田真莉絵
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