発達障害の子どもを東大に入れたシングルマザーが語った「子どもが問題を起こしてしまったとき」
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BW_machida

2020/10/23

 

「気持ちが楽になりました」
「子どもと向き合うとき、まず自分が無理をするのはやめようと思いました」

 

集まった女性たちから、こんな感想が聞こえてきたのは、10月18日に東京・世田谷の烏山区民センターで開催された「お悩み相談座談会」でのこと。

 

この日、登壇したのは今年8月、出版した初めての著書『発達障害に生まれてくれてありがとう シングルマザーがわが子を東大に入れるまで』が、ネット書店の部門別ベストセラーランキング1位を飾るなど大好評の菊地ユキさん。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、規模の大きな講演会など活動が制限されるなか、彼女の本を読んだ子育て中のママたちからの熱烈なリクエストを受け、参加人数を絞った形で座談会は実現したのだ。

 

「子どもがしてしまいそうな失敗を、先まわりして支援するコツは? そもそも、先まわり支援って必要ですか?」
「学校の先生との関わり方に秘訣ってありますか?」
「我が家には発達凸凹の子のほかに、定型発達の兄弟(姉妹)がいますが、その子へのケアの方法は?」

 

などなど、それぞれのママたちの、具体的な子育ての悩みに、菊地さんが答えていく。
小学校入学早々にADHDの診断を受け、すさまじく手のかかった長男・大夢くんを苦労の末、東大大学院に入れた菊地さん。先輩ママの金言に、子育てまっ最中のママたちは真剣な表情で耳を傾けていた。

 

本のなかでも触れているが、菊地さんは小学生時代の大夢くんが問題を起こしてしまったとき、じっくりと時間をかけてその理由や、行動の真意を聞き出してきた。その点についても、参加したママからは次のような質問があった。
「子どもが学校で問題を起こしてしまったとき、その理由を家庭で聞き出そうとしてもなかなか素直に答えてくれません。問い詰めれば問い詰めるほど、頑なになって、なにも語ろうとしてくれないんです。なにか聞き出すコツはありますか?」

 

これに対して、菊地さんはまず笑顔で一言。
「私は、『これは3〜4時間はかかる』と、最初から覚悟を決めてから聞き出すようにしていました」
とはいっても、そこは“剛の者”大夢くん、一筋縄でなんて、いくはずもなくて……。
「なかなか話してくれないと、もちろん私もイライラもしてきます。でも、途中でテレビ見ながら、アイスを食べたりしながら、気を紛らしながら……いずれは話してくれるだろうという気持ちで、ひたすら我慢、我慢で気長に対応します。やっぱり、スムーズに話してくれるなんて、はなから考えないというか。最初から時間がかかるもの、と覚悟を決めることが大事です」

 

菊地さんは少し真剣な面持ちになって、さらにこんなふうに言葉を続けた。
「そのとき、そのときで質問の仕方などは変えていましたね。子どもの気持ちの状態はやっぱり毎日、毎日違うものなので。今日はガミガミ怒られても大丈夫な感じかな、とか。今日は素直にスルスルっと話してくれそうだな、とか。ときには、今日は学校から帰ってきたときから落ち着きがないという日もありましたから。毎日、子供と接し、よく見ているお母さんなら、今日はこんなふうに聞いたら話してくれるな、やっぱり今日はそっとしておいたほうがいいな、というのも分かってくるはずです。でも……」

 

ここで、菊地さん「フフフッ」と思い出し笑い。そして
「ときには私も感情をおさえられなくなって、イライラした気持ちをそのまま、一方的に大夢にぶつけることもありましたよ。そんなとき、怒鳴り続ける私の前で、大夢はじーっと黙ってるんです。最終的に私が『わかったの!?』って聞くと、大夢は『わかった』って言うんです。私がもう一言『いったい何がわかったの!?』と問い詰めると……。『お母さんの、わかったの?っていう言葉は、わかった』って(笑)」
会場は、ママたちの笑い声で包まれていた。

ライター 仲本剛

 

 

発達障害で生まれてくれてありがとう
菊地ユキ/著

 

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