人類発祥の地は奈良にあった!?―――日本の8大聖地・天理教教会本部
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日本では土着の信仰である神道のほかに、朝鮮半島や中国から仏教がもたらされ、多くの聖地が生まれた。参拝客が絶えない「開かれた聖地」がある一方、「封印された聖地」もある。パワー・スポットとも呼ばれる聖地には、一体どんな秘密があるのか。その謎に迫る。

 

教祖みきの眠る場所

 

 

天理市は一大宗教都市である。天理駅から歩き始めれば、いきなりその偉容にぶちあたる。建物の屋根はどれも入母屋で、その上に千鳥破風(はふ)が並ぶ特異なものだ。それが何棟も建ち並んでいる様は圧巻。

 

これだけ特殊な空間はほかにない。少なくとも宗教とは何かを考える上で、天理教教会本部のなかに入ってみるという体験は相当に役に立つ。誰もが一度はそこを訪れるべきと言ってもいい。

 

教会本部の中心は「ぢば」と呼ばれている。漢字を当てれば「地場」となるが、そこは天理教の信仰においては特別な空間、つまりは聖域になっている。もともとそこは天理教の開祖となった中山みきが住んでいた屋敷であったが、天理教の信仰では人類が発祥した場所とされている。

 

そこがたんに天理教という宗教が生まれた場所という位置づけなら、特別なことではない。だが天理教では、人類全体がそこから生まれたという解釈をとっている。だからこそ天理の駅などには、「おかえりなさい」という看板が立てられている。人類発祥の地である以上、そこは人類全体の故郷なのである。

 

増築を重ねる礼拝堂

 

教会本部と教祖殿のほかに、信者や天理教の布教師たちの霊をまつる祖霊殿があり、回廊で結ばれている。それだけでもかなりの規模になるが、さらに周囲には「おやさとやかた」という建物の群が建ち並んでいる。

 

これは戦後の建築で、「八町四方」、つまりは872メートル四方の連続した建物で「ぢば」を囲もうとするものである。その全体が完成しているわけではないが、宗教都市のイメージをさらに鮮烈なものにしている。

 

聖地というものは、当初は平地や岩場など自然の環境がそのまま用いられ、そこで祭祀が営まれた。ところが、つねに祭祀が営まれる恒久的な祭場になっていくと、建物が建てられていく。

 

そして、建物の建設がはじまると、建物自体を壮麗で厳かなものにしようとする動きが生まれ、立派な社殿や神殿が築かれていく。

 

とくに天理教では、宗教的な建築物を作り上げることに力が注がれてきた。そこには飯降伊蔵(いぶりいぞう)という人物の存在があった――(続きは本で)。

 

以上、『日本の8大聖地』(島田裕巳著、光文社知恵の森文庫)の内容を一部改変してお届けしました。

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