一流人は、誰かとつき合うメリットを初対面で、瞬時に見抜く。
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あなたは一瞬でその人の本質を見抜くことができる?

 

私は仕事柄、インタビューなどで初対面の人と話をする機会が多かった。限られた時間の中で、いかにその人ならではのエピソードを聞き出すか、さらけ出させるかが勝負どころとなってくる。

 

「今日はよくしゃべりました。またいつでも遊びにいらっしゃい」と、関係性が発展して喜んでいただけるときは、とても嬉しいものだ。

 

だから私は、前もって下調べしてこないインタビュアーは認めない。逆に、「なんでそこまでご存じなんですか」と言えるような準備をしてきた相手には、たとえ意地悪な質問をされても、惜しみなく言葉を捧げることにしている。人と人との契りとはそういうことだと思っている。

 

テープレコーダー持参で録音するもの、メモを取るもの、人によってさまざまだ。

 

ある知人のジャーナリストで、一切メモは取らなくても、書くときに会話を再現できる、という人がいる。

 

メモを取らないですむと、取材相手と目線を合わせていられるというメリットがある。

 

メモを取りすぎると、目線がノートにばかりいってしまい、取材相手の表情の変化がつかめない。表情を読むことによって、相手の真意を感じとる。そこがものを書く上での能力にもなるのだろう。

 

初対面の人と小一時間、顔をつき合わせて、その表情の変化から何かをつかむことは相当勉強をしていないとできない。相手のごまかしや噓を見破るには、ものごとの真実や本質を知らなければならない。

 

ジャーナリストの日垣隆氏は、インタビューの前日までに相手の著書をすべて読むのだという。近著を一冊読むのではない。全部だ。日垣隆氏は毎月一〇〇冊も本を読むことを何年も続けているというから、こんなことができるのだろう。

 

ものを書く商売でなくても、「人を見抜く」というのは、最も大切な仕事のひとつだ。

 

これにすべてがかかっているといっても過言ではない。

 

私が作家デビューして間もなく、CM制作会社の社長を紹介されたときに、「どうして私を……」と聞いたら、「金の匂いがしたから」とサラリと正直に答えられた。

 

私は、不思議と嫌な気がしなかった。甘い言葉で近づいてくるウサン臭い人間より(「友だちだよね」なんてふざけるな)、こういう男のほうが信用できる気がした。

 

ようするに、チャンスと金の匂いがあるうちは、くっついてくるということなのだろう。それもよしかもしれない。

 

考えてみれば、人が「誰かに会おう」と考えるとき、無意識のうちに「その人は自分にどんなメリットを与えてくれるか」を考えている。わざわざ大切な時間を割いてまで会うにふさわしい人物であるかどうか、頭の中で考えている。とくにビジネスシーンではそう。

 

人が時間を割く場合、お互いにメリットをシェアできる関係であることが基本となる。

 

私は必ず、親しくなると、「なぜ会ってくれたのですか?」と聞く。

 

あやふやにして答えない人間より、「金の匂いがしたから」とか「好きだから」と率直に言う人間のほうが、むしろ好きだ。

 

また私はよく同じ質問をされる。

 

「あの人とどこで知り合ったのですか?」
私にとっては当たり前の話だが、人は、人と人がどこでめぐり合ったのか、気になるもののようだ。とくに行動と努力をしていない人ほど。

 

「その人のステイタスを測るなら、誰に紹介されたかによる」
と言っていた先達がいた。会員制クラブなどはその例。

 

事業を興すとき、投資するとき――いつでもどこでも、相手の真意を見抜けないと、大失敗をすることになる。

 

「人間が噓をつく確率は約一〇パーセントだと言われている。だから人の話も一〇人から聞いたら一人は噓をついていると考えておかなければいけない。すべてを鵜呑みにすると判断を間違えることになりかねないのである」

 

とおっしゃったのは、私をデビュー当時から応援し、ラジオ番組『世相ホットラインハイ! 竹村健一です』にも呼んでくださった、竹村健一氏の言葉だ。

 

そして、人を見抜く一級の目を持つフィクサーから私が聞いた言葉。

 

「タキシードを着ていても、ウエイターにしか見えない男は成功しない。三〇過ぎて、仕立てのいいスーツに袖を通したことのない男もダメだ」

 

人を見抜き、見抜かれる――。自分も試されるのだから、自分の目を養い、そして見る目がある人とつき合うことです。

 

相手の本質を一瞬で見抜く目を養え。

 

 

以上、『新版 成功する男はみな、非情である。』(いつか著、光文社知恵の森文庫)を抜粋・一部改変して掲載しました。

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