星野リゾートに見習う会社を「リサイクル」する発想
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日本にある会社の99・7パーセントは中小企業である。その多くが抱えている問題が「後継者不在」。社長は高齢化しているものの引き受け手のいない会社が、日本には127万社も存在する。世はまさに「大廃業時代」を迎えています。
会社という、人脈やノウハウ、ブランドを持つ「資源」をリサイクルし、未来へ繋ぐ。自らも安定した収入を得て、一国一城の主として自由を手に入れる。個人が幸福なキャリアを追及することで勝手に社会課題の解決に繋がる「事業買収」を、「社長のおくりびと」の異名を持つ事業承継コンサルタントが伝授する光文社新書『0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円』が刊行されました。
刊行を記念して、作品の一部を公開します。0円~数百万円の個人でも用意できる金額で会社を買い、社長として成長させるための秘訣をぜひ知ってください。

 

 

足りない時代には、新しく作るしかありません。

 

戦後の日本はそれに該当する時代だったのでしょう。戦争で何もかもが焼けてしまい、社会の仕組みも崩壊してしまいました。「ない時代」です。ならば、新たに作っていくしかありません。結果、作る人が成功した時代です。

 

しかし、高度成長期を経て日本は物質的に充実しました。「ある時代」です。この時代になれば、作ることの重要性が低下することは想像がつきますね。もう世の中にはたくさんのものがあるのですから。

 

今のような成熟社会とは、すでに「ある時代」です。「ある時代」にやるべきは、再活用です。作られたものがたくさんあるわけですから、これを適切に活用したほうがいいでしょう。環境は常に変わり続けます。それゆえ、変化にあわせてあるものを活用しなおす営みに終わりはありません。

 

会社や事業にも、同様のことが言えるはずです。次々と会社は設立され、今となってはすでにあり過ぎる状況なのでしょう。これ以上増やすことよりも、既存の会社や事業を上手に活用しなおすことを考えるべきフェーズに突入していると思います。

 

言わば、会社のリサイクルです。資源だけではなく、会社や事業だってリサイクルの対象になります。この発想はまだ一般的にこそなっていませんが、一部の企業はこうした趣旨の取り組みをすでに行い、成果もあげています。

 

たとえば星野リゾートという、温泉旅館やリゾートホテルを運営する企業があります。業界の革命児として注目される存在なので、ご存知の方も多いでしょう。同社は元々、長野県軽井沢の温泉旅館から始まりましたが、今や日本全国の宿泊施設を運営しています。

 

星野リゾートが施設数を増やし、急成長したきっかけは、再生事業に乗り出したことでしょう。営業不振に陥ったリゾートホテルや旅館の運営を引き取り、星野リゾート流の手法で蘇らせました。すると、その実績を知った他の宿泊施設からも再生の依頼が来るようになった。こうして再生事業の循環が起きたと推測します。

 

この営みも、会社や事業のリサイクルにあてはまります。ゼロから作るよりも、今あるものを活用することの効率の良さを感じられませんか?

 

少し余談になりますが、星野リゾートの取り組みを見ていると、やはり経営はやり方次第なのだと、改めて感じます。たとえ立地や建物などのハード面は変わらずとも、アイデアや工夫、熱意などで巻き返しが可能だと教えてくれます。

 

私たちはよく「○○業はダメだ」という具合に、全体的なものの考え方をしたり、ものごとの表面だけを見て諦めてしまったりしがちです。しかし、もう一歩踏み込んでみれば、見える世界が変わります。「どうすればやっていけるか」をしぶとく模索すれば、案外と道は拓けるものです。世間を見回してみると、会社や事業をリサイクルさせるような方法で成功している企業は、他にも結構あるはずです。

 

この「リサイクル発想」はまだまだ可能性を秘めていると、私は信じています。それもいずれは平凡な取り組みになってしまうでしょう。そうなる前の今こそがおいしいタイミングであることに間違いありません。

 

会社もリサイクルできる対象です。個人の所有物である一方、多くの人が関与するという意味では社会的資源と見なすことができます。ならば、オーナーが一人で抱え込むのはふさわしくありません。みんなでシェアすべき対象と考えるほうが適切でしょう。その資源は上手く活かせる人に託されるべきだ、という結論を導くことができそうです。

 

しかし、小さな会社をめぐる取り引きや投資は、現状、ほとんど仕組みが確立されていません。たとえば、確かな取引市場などはまだ存在していません。

 

絶対的な方法論もまだありません。先行してかたちが築かれた大きな会社のM&Aのやり方を基本にして、なんとなくやっているのが現実です。しかし、それに従ってガチガチにやることは、小さな会社の取り引きにはあまりふさわしくないようにも感じます。

 

そもそも小さな会社の場合、売りに出てこないものばかりです。買い手や後継者を探していると表明している会社なんて、全体の1パーセントにも達していないはずです。本来ならば会社売買の対象になるべき会社でも、その事実を隠しているケースばかりです。

 

ここであなたのマインドが問われます。

 

繰り返しになりますが、小さな会社の取り引きは、まだ十分に整備されていません。だから「危険だからやめとこう」と考えますか?

 

誰もやっていないから、止めておきますか?

 

「だからこそ踏み込めば面白い」と、私は思います。まだライバルがほとんど入ってきていない世界なのだから、おいしい案件がゴロゴロ眠っています。やり方が確立されていないということは、あなたの立ち振る舞いによって予想以上の大きな成果をあげられる余地があることを同時に意味します。

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