akane
2019/05/16
akane
2019/05/16
「知り合いの社長から会社を継いでくれないかと頼まれたのですが、どんなものでしょうか。売り上げが3500万円で、借金が4000万円あるそうです」
先日こんな相談が寄せられましたが、どう考えてもアウトです。常識的に考えて、借金が大きすぎます。ほぼ永遠に借金は返しきれないか、その前に会社が力尽きるでしょう。ただし、この会社を継ぐ方法がないわけではありません。それについては、後ほど解説します。
私からすれば、継がせるにはあまりに大きすぎる借金です。バランスが悪すぎます。しかし、社長としてはなんの悪気もなく、その問題に気が付いていないようでした。
この話にはおまけがあって、「お前は自宅の不動産を持っているから、借金の担保に出せるもんな」とも言われたそうです。それぐらい、社長にとって借金というものがあたりまえになってしまっているのでしょう。
あなたが交渉をする時も、先方の社長は平気で大きな借金を引き継いでもらおうとするかもしれません。うっかりその話に乗ってしまったり、勢いに負けてしまったりしないよう、知識で武装しておいてください。
数字の弱さは日常業務でも垣間見られます。
たとえば、見積もりひとつを出す際にも「なんとなく」や「これまでこうだったから」と計算しています。さらに、先方から値下げを求められ、あっさりと応じてしまうことも……。論理的に考えられていないから、その仕事でどれだけ利益を出せるのかわかりません。
営業活動でも同様です。なんとなくやっているので、大した売り上げにつながらないお客さんに時間を割き、一方で良いお客さんをほったらかしていることも。計画的な営業の作戦も存在しません。このあたりは、あなたが会社に入ることで格段に改善できるでしょう。
子供たちが家業を継がないケースが大変増えています。親が事業をやっている子供の学歴は高い傾向にあるような気がします。都会の大学に進学し、そのまま帰ってこずに大企業に就職するケースはよくあります。個人の意思を尊重しようとする、世の中の意識の変化も影響しているはずです。
また、社長が家業を継ぐことを子に強く要求しなくなった面もあります。その裏には、大企業に対する社長のコンプレックスがあるような気がうっすらしています。
中小企業の社長とは一匹狼のイメージかもしれませんが、案外と権威や大きな存在になびきやすい気質があるのかもしれません。大企業やお上、さらには資格業などの先生と呼ばれる人間に対して弱い面がある印象です。事業承継の対象となる年代の社長になると、それをより強く感じることがあります。
私は資格業の端くれでした。開業当初、資格だけ持っているけど何もわかっていない若造でしたが、そんな私の話でもかなり聞き入れてもらえたのは、資格があったからでしょう。他の場面でも「資格業の先生だから」と、どう考えてもその人は門外漢である相談内容を、社長が持ちかけている姿をたくさん見てきました。
大きな企業に弱いところも同様です。
「有名企業から声をかけてもらった!」と舞い上がっている社長の姿を、何度見たことでしょうか。でも、その条件を確認させてもらったら、いいように搾取されるだけの未来しか見えないものだったり……。逆に言えば、もしあなたが大きな会社に勤めていた経験があれば、それだけで一目置かれる可能性があります。
税金への意識にも、サラリーマンとオーナー社長には差があります。
サラリーマンのお給料からは勝手に税金が引かれています。しかし、小さな会社のオーナー社長ならば、自分でコントロールする余地があります。そのため、せっかく稼いだお金だからなるべく手元に残したいと思う人が多いでしょう。このあたりは、経営をやってみて初めて知る感覚だと思います。ただ、必要以上に税金や税務署を意識している場合もあるので、交渉を進める上ではこのあたりも気にかけておくといいと思います。
思い込みも多分にあるでしょうけれど、私がイメージする中小企業の社長像をお話ししてきました。接点がないと、なんとなく怖い気もしますが、基本的にいい人ばかりです。悪い人はそんなにいません。とっつきにくくても、打ち解けると実はとても優しく、人間味にあふれています。弱みを見せないように心に鎧を着てしまっている人もいるので、オープンに心を開かせられるかが勝負です。早い段階で、一緒にお酒を飲みにいくのもありです。
人情に厚く、従業員やお客さんのことを心から心配する社長もたくさんいます。そこまでこっちが考えてあげなくてもいいのに、と思うくらいです。
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