akane
2019/05/31
akane
2019/05/31
■ブルー・オーシャン(Blue Ocean)
日本で2005年に初版が出版されたキム&モボルニュの『ブルー・オーシャン戦略』が売れ、新しい事業を考える時には、すでに競合企業で満杯の「レッド・オーシャン」ではなく、誰もいない「ブルー・オーシャン」市場を目指すべきだと言われてきた。「レッド・オーシャン」は既存市場、「ブルー・オーシャン」は未知の市場と定義されている。
また同書では、従来の戦略論は、レッド・オーシャンでの競争を重視してきたとも述べられている。
横並び志向の強い日本企業では、すでに同業他社が多数いる市場に後発で参入し、結果的に価格競争になり、赤字を計上するケースが少なくない。意思決定の際に、前例や同業他社の動向を気にする企業が多いからである。そのためブルー・オーシャン戦略は、日本企業に多くの示唆を与えてくれた。
また、ブルー・オーシャン戦略を構築するフレームワークとして、「戦略キャンバス」と「4つのアクション」という方法論が示された。
戦略キャンバスは、既存業界の企業が与える価値と、新規参入者が与える価値を比較した図であり、新規企業が顧客に与える価値を一目で“見える化”したものである。
後者の「4つのアクション」は、従来の業界の常識から (1)取り除く、(2)減らす、(3)増やす、(4)付け加えることによって、新しい価値を提供する方法を考えるものである(図表14)。
……………………………………
しかし『ブルー・オーシャン戦略』で紹介された企業は、もともと既存業界のプレーヤーとビジネスモデルが違う企業ばかりである。
例えば同書で紹介されたシルク・ドゥ・ソレイユは、既存のサーカスとはビジネスモデルが全く違い、“サーカス業界”の企業とは呼びにくい。「サーカスを観に行こうか、シルク・ドゥ・ソレイルユを観に行こうか」と迷う人はほとんどいないと思われ、既存企業との比較を後づけ的に行うことは、どれだけ意味があるだろうか?(図表15)
ブルー・オーシャンは、既存業界と次元の異なる価値を提供するから生まれるものであり、それを既存業界の企業と比較するのは、そもそも意味が薄い。
逆に言えば、ブルー・オーシャンを開拓した企業の成功を見て、後づけ的に戦略キャンバスを描くことはできる。従って「戦略」とは銘打っているが、事前に“ブルー・オーシャン戦略”を立てるのは難しい。
戦略策定にブルー・オーシャン戦略を使うプロジェクトが進行中のようであるが、今後を見守ってみたい。
また4つのアクションのいくつかは、ブレーン・ストーミングの考案者として知られるA・F・オズボーンが提唱した発想法((1)転用、(2)応用、(3)変更、(4)拡大、(5)縮小、(6)代用、(7)置換、(8)逆転、(9)統合)と類似しており、さほど新しい概念とは言えない。
新製品・新サービスのアイデアを考えるのと同じ手法で、ブルー・オーシャン市場が発見できるのであれば、この4つのアクションは、もっと普及して良いはずであろう。
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.