akane
2019/09/18
akane
2019/09/18
※本稿は、小出宗昭『掘り起こせ!中小企業の「稼ぐ力」』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
まちおこし、地域活性化、地方創生……。表現の仕方は違いますが、これまでさまざまな方法で、地方をよみがえらせようとする試みがなされてきました。
しかし、現実には人口減少や経済の縮小などといった要因が重なり、衰退の傾向に歯止めがかかりません。
実効的なプランを描き、危機を乗り越えることができる「地域再生の担い手」の必要性が、年々増してきていると思います。
いままでも相当な人数と時間と費用を費やして地方を再生する取り組みが行われてきました。しかし、それらの策を一つひとつ検証してみると、共通する問題が見えてきます。
それは、特定の層に限られた活性化策だということです。
私は、真の地域活性化とは、部分(点)ではなく、全体(面)で捉えられるべきものだと考えています。
「面」とは、エリア内で経済活動を行っているすべての事業者を指します。中小企業、小規模事業者、個人事業主(農家、漁師なども含めます)……。業種を問わずすべての地域産業が全体的に活性化すること。それが本当に求められていることであり、それなくして地域再生はあり得ません。
私が知る限り、そうした包括的な施策を行っている地域や取り組みはいまのところ見当たらないのです。
エフビズは2018年8月、開設10周年を迎えました。私はエフビズを立ち上げるときから決めていたことがあります。それは、
「お金をかけず、知恵を出す。結果にとことんこだわる」
ということです。
エフビズが目指しているのは、地域に根を張り、ビジネスを展開しているすべての中小企業の活性化です。すなわち、「点」ではなく「面」で攻めることで地域再生につなげるのです。
その地域の産業と雇用を支えているのは、地元の中小企業、小規模事業者です。
知っておいていただきたいのは、日本には大企業は0・3%しかないということです。
経済ニュースの報道は大企業を中心になされますが、実は日本の会社のほとんどは中小企業なのです。ここをきちんとサポートして成果をあげ続けることが、「面」での地域活性化につながる唯一の方法だと私は考えています。
私は2008年からエフビズのセンター長として地域の産業支援に取り組んできたわけですが、その経験と日本の地方の現状を照らし合わせて切実に思うのは、エフビズモデルを実践するには、かなりビジネスセンスの高い人材でないと無理だろうということです。
なぜならば、大企業と違い、地方の小さな会社はヒト・モノ・カネ、すべての経営資源に課題を抱えており、その流れを変えるには「知恵」を出すしかないからです。
知恵とは、人材や設備、資金に頼らずに、切羽詰まった状況を好転させる究極のアイデアのことです。全国を見渡しても、そんな知恵を連続的に出し続けられるコンサルタントはほんの一握りです。
地域再生は、プロフェッショナルにしか務まらない。それも、プロと呼ばれる人たちのなかでもトップレベルの人材でなければ無理。そういう意味で、私は「地域再生はプロの仕事」と普段から言っているのです。
エフビズができた当時、すでに全国の自治体には公的な産業支援機関が整備されていました。つまり長年、地方の産業振興が重要課題に位置付けられ、さまざまな政策・施策が推進されてきたのです。何十年も国をあげて取り組んでいるわけですが、思うような成果はあがっていません。
「地方創生」の名で、毎年1000億円規模の交付金が各自治体に交付されています。しかし残念ながら、その予算によって地域産業が活性化し、地方経済が元気を取り戻したという実感をもっている自治体はあまりありません。
なぜ、手厚い優遇政策、補助金が無駄になってしまうようなことが延々と続いているのでしょうか。なぜ、産業振興策はなかなか結果を出せないのでしょうか。
それは、問題を抱えている地域が自ら動き出すような、“内発的”なものではなかったからです。ハコモノを作ればよしとされていたからです。地域に根差したものでない限り、いずれメッキが剥がれ、朽ち果てていきます。
棚からボタ餅のように、予算も計画も全部、口を開けていれば落ちてきますから、地元の人は楽で仕方がありません。楽だということは身になっていないということです。
われわれが進めているエフビズ方式は、地域の潜在力を掘り起こすやり方です。
2008年4月に当時の経済産業大臣からお呼びがかかり、産業支援機関の現状と課題について意見を交わした際の共通認識は、
「経産省も中小企業庁も、既存の中小企業支援策はすべてやり尽くした。制度やハードには問題がないはずなのに期待する成果が一向にあがらないのは、“ソフト=人”に問題があるから」
ということでした。
企業が抱える課題はさまざまですが、われわれエフビズに持ち込まれる相談の大半は「売上」を中心にした経営に関するものです。後継者問題など、一見、売上とは無関係に思える相談もありますが、経営が順調であれば、引き継ぎたいと考える家族・社員や取引先がいるはずです。
結局、問題解決の本質は、売上を伸ばし、儲かるようにすることなのです。
つまり、中小企業支援に求められるのは、売上を伸ばすための具体的なプランやアイデアを提示し、結果を出す(売上をアップさせる)ことです。もっと端的にいえば、「こうすれば儲かる」というビジネス戦略を示すことです。
ところが、既存の中小企業支援では、こうした切実なニーズがあるにもかかわらず、財務諸表などをもとにした問題点の指摘に終始するケースが多く見られます。あるいは、事業計画書の作成や補助金申請など、実務的な助言で終わることもあります。
これでは、「売上を上げて、経営状態をよくしたい」と思っている相談者を失望させるだけです。
だからこそ私は、エフビス開設以来、「お金をかけず、知恵を出す。そして結果にこだわる」という姿勢を貫いてきました。
ヒト、モノ、カネ、いずれも潤沢ではない中小企業ですから、知恵を頼りに売れる戦略を考えなければなりません。「結果」とは、ほかでもない、相談企業の売上を伸ばし、儲かる企業に変えることです。
これまでの中小企業支援策で「人材」に大きな課題があったというのは、この「お金をかけずに、結果を出す」ことのできる人材がいなかったという意味です。
結果に結びつく知恵を出し続けられる人を、プロフェッショナルと呼びたいと思いますが、そういう人材が地域の企業支援の現場に圧倒的に少なかったのです。
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