akane
2019/05/02
akane
2019/05/02
会社を経営して事業をやるとなれば、借金と関わらざるを得ないケースがあります。会社経営と借金は、切っても切り離せないものがあります。
よくある話ですが、会社の後継ぎ問題で、従業員幹部に次期社長就任を打診したところ、その奥さんから反対にあうことがあります。奥さんとしては、旦那が社長になることより、ひいてはチャレンジすることより、安定のほうがずっと重要だからでしょう。その気持ちはわかります。そして、安定を脅かす一番の敵が、会社の借金や個人保証だと思われています。
たしかに、多くの中小企業は事業のために銀行から借金をしています。その際に、「個人保証」と呼ばれる連帯保証をほぼ取られています。ゆえに、会社が借金を返済できない時は、個人資産を投じてでも返済しなければいけません。返済できなければ破産せざるをえない場合もあるでしょう。
ホリエモンこと堀江貴文氏が、かつて「借金して返せなくなっても、一回ならば、破産という国が用意してくれた合法手段で帳消しにしてもらえる。だったら勝負に出ないなんて考えられない」といった内容の発言をどこかでされていた記憶があります。
この意見には一理あります。この理屈をよりどころとしてリスクを平気で背負えるメンタルの強さを持った方は、どうぞためらわず進んでください。ただ、堀江氏の言う通りに動ける方は少数派だと思います。
とはいえ、先ほどの奥さんをはじめとするリスク回避論者の主張も受け入れにくいので、この問題を掘り下げて考えてみましょう。
まず「リスクを避けろ」と反対する人は、雰囲気だけで過剰に反応してしまっているケースが多いように思います。しっかり問題と対峙し、リスクの正体を見極めなければ、解決策は生まれません。
堀江氏が言うように、連帯保証をしている社長が実際に破産することになったら、どうなるでしょうか。
個人財産を手放させられ、財産は換価して借金返済に充てられます。それでも残ってしまった借金は、裁判所の手続きを経て消されることになります。
でも、裏側から考えてみてください。極論を言えば、社長が個人財産を持っていなければ、会社が潰れてもたいした問題ではないともいえます。最初から財産を持っていなければ、失うものなんてありません。それ以外のデメリットは、今後のローンなどが組みにくくなることぐらいでしょう。
「銀行が乗り込んできて大騒ぎになったりしないのか」と、怖がる方がいます。しかし、銀行はあくまで法律やルールに則って、淡々粛々と行動します。こちらとしても、返済するお金がなければどうしようもありません。銀行は金貸しを業としていますし、借金の回収不能という事態も想定しています。保証協会や担保によってフォローしてもらってもいます。そこまで恐れる必要はないでしょう。
むしろ、気を付けておきたいのは一般の債権者です。たとえば商品の仕入れ先などです。彼らには法律の理屈が通じなかったりします。社長個人として本来は責任がないケースであっても、おかまいなしに請求してくることだってあるかもしれません。毎晩のように夜中に電話してきて「金を返してくれ。信用して貸したんだ」と迫ってくることもあり得ます。あちらも必死ですから、当然です。過去には、色々な悪評を広められて、社長がその地域や業界にいられなくなったケースもありました。
社長としては、お金を借りている銀行に比べ、仕入れ先のほうが言うことを聞かせやすいので、支払いの延期などの無理を飲ませてしまっていることがあります。こちらがお客さんの立場だから強いためです。
また、苦し紛れに友人や親類に泣きついて、返せる見込みがない借金をするケースもあります。しかし、いざお金を返せなくなった時には、一番厄介な相手になるのがこの人たちです。本来、良好な関係を保っておけば、自分がどん底の時に助けてくれる相手でもあるのですが……。近い関係の人ほど、日頃から大切にして、変なことに巻き込まないよう心がけましょう。本論から外れてしまいましたが、とても大切なことです。
借金が銀行からだけならば、万が一破産になったとしても大きな混乱なく処理ができるでしょう。もちろん、まっとうな商売をしていて、不正行為をしていないことは前提です。
続いて、「最初から社長が個人保証をしない」という逆転の発想も考えてみましょう。
まず押さえておいてほしいことがあります。法律上、会社の借金などの負債は、社長がすべて個人として責任を負うわけではありません。あくまで会社と社長は別の人格です。会社の借金だからといって、社長個人は責任を負わなくていいのが原則です。
たとえば会社が10億円の借金を残して倒産。その時、社長が個人名義の5億円の豪邸を所有していたとしても、債権者は家に手を出せません。社長は豪邸で暮らし続けられます。だからこそ、銀行はわざわざ「個人保証」と呼ばれる連帯保証の契約を社長個人と結ぶのです。
この原則に照らし合わせれば、あなたが会社を買ったとしても、借金の連帯保証さえしなければリスクを無力化できることになります。
当然、銀行はあなたが会社を継いで社長になれば、連帯保証を求めてくることでしょう。しかし、言われた通り受け入れるだけが選択肢ではないように思います。
「先代が作った借金だから、私には個人保証ができない」「個人保証をするには条件が悪すぎる。銀行からなんらかの譲歩が引き出せるなら考えてもいい」など、ある意味これまで会社に無関係だったあなただから、こんな交渉をもちかけることができるかもしれません。
そもそもの話として、借金がなければ会社を潰すことを恐れる必要はありません。余計な借金をしないことが、会社が潰れる場合の究極の対策になります。
すべての会社が順調にいくわけではなく、経営が失敗する場合だってあり得ます。状況によっては、これ以上深入りする前に、撤退の道を選んだほうがいいこともあります。その際、借金さえなければ会社をたたむ選択肢を取ることが容易になります。
借金で自分を縛らないようにするのが根本的なリスク対策です。過去の日本の経営者は、会社を大きくすることばかりを目指し、あたりまえのように借金を積み重ねてきました。返済への考えも甘かったように見えます。このあたりは反面教師にさせてもらいましょう。
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.