ryomiyagi
2019/11/27
ryomiyagi
2019/11/27
ここで昔話をひとつ。
私の母・葉子は、私が何か頼んでも、「だって私、これできないの」とはっきり断る人でした。子供心に「え、ひどい」なんて思ったこともありますが、今考えると、それは正しかったのではないかと思います。
あるとき、こんなことがありました。
家の洗濯機が壊れて、今みたいに電話やネットですぐ新しいものを持ってきてくれる時代ではなかったので、代わりの洗濯機が到着して電気屋さんに設置してもらうまでに1週間ほど待たなくてはいけなくなったのです。
当時、私はまだ若くて力もあったので、自分の洗濯物と、ついでに家族のものもできる範囲で手洗いしてしのいでいました。
そんなとき、父が母に、「そろそろシーツを洗濯してくれよ」と言っているのが聞こえたのです。
すると母は、「私はできないわよ」と一言。
父が「いく子はやってくれた」と食い下がると、母は、「いく子はできたわよね。でも私はできないの!」と言い放ったのです。
それを聞いた私は「はあ?」と思わずぽかーん。
でも今思えば、当時、家業で忙しい母が無理をして服を手洗いし、疲れ切って体調を崩したり、機嫌が悪くなることを考えれば、確かにやらない方が正解だったのです。
人間だれしも、「できないことはあって当たり前」。
ほかにできることがあるのだから、何か一つくらいできないことがあってもいいではありませんか。
「私、これできません」と宣言することから、自分のおしゃれや人生が始まると思うのです。
※この記事は『おしゃれは7、8割でいい』(地曳いく子・著)より、一部を抜粋・再編集して作成しています。
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