akane
2019/05/09
akane
2019/05/09
今回も、利害関係者(ステイクホルダー)について考えることで、私が「事業買収」の対象としておすすめする小さな会社そのものへの理解を深めてみます。私の独断と偏見によるところが大きくなってしまう点は、ご了承ください。
前編では株主・代表取締役、従業員、債権者について見てきました。
後編は、顧客や取引先、地域社会との関係について見ていきます。
顧客との関係性はそれぞれの会社で大きく異なり、一概にまとめることは無理があります。それでもあえて一般化させるならば、社長の顔があるから仕事をもらえているケースが多いかもしれません。大企業のように、会社の看板や組織による営業力とは反対ですね。社長が一人で仕事を取ってきて、他の従業員はそれをこなすだけという会社も多いでしょう。新規顧客をまったく開拓していない会社も結構あります。
たとえば、大手の会社の下請け的なポジションになっていて、その発注元に完全に依存しているようなケースです。指示されるままの仕事を忠実にこなします。結果、製品やサービスのクオリティは高いものの、営業力は弱い会社になります。
当然、発注元から取り引きを切られたら会社は終わってしまいます。製造現場の海外へのシフトチェンジといった事態も、色んなところで見てきました。それでもなお、一社や数社へ依存する状態から抜け出せない中小企業が多々あります。
一般論として、お客さんのほうが力関係は強くなるため、かつては顧客である大企業が無理難題を要求するケースが目につきました。しかし最近はようやく、しっかりした対応をしてくれる会社の大切さが、発注元の大企業側にも認識されだしたように感じます。廃業の増加などで、これまであたりまえだった案件を継続することすら難しくなってきた反動でしょう。そのため、下請けの小さな会社であっても、地位が向上し、発言力が強くなっている場面が見受けられるようになりました。
今度は逆に、こちらがお客さんとして接する相手です。仕事を発注したり、商品を仕入れたりする相手です。
中小企業の場合は、同じ発注先を長年使い続けているケースが多くあります。取り引き相手どころか、取り引き内容すら見直していない場合も結構あります。そのため、メスを入れてみると、世間の相場や変化とかけ離れた仕入れをしてしまっていることがあります。
ひとつの商売の流れの中でいくつもの業者を経由していることも、いまだにあります。外から見たら「もっとシンプルにやれるだろう」と思わずにはいられませんが、それが常識として繰り返されています。このあたりは、改善の余地がたくさんあるところでしょう。
取り引きのやり方も、ルーズな場合が多くあります。過去からの流れでなんとなく取り引きをしているケースが多く、契約書が作られていないことも珍しくありません。
小さな会社とはいえ、地域経済では重要なプレーヤーとなっていたり、社長が地域の重鎮だったりする場合があります。都市から離れ、地方に行けば行くほどその傾向は強まります。
仮に、人口が数万人にとどまる自治体で50人を雇う会社を経営していたら、街では一目置かれる存在でしょう。そうなると社長が色々な会に属し、役員として頑張っていることも多いはずです。誰かの選挙応援などで、政治活動に足を突っ込んでいる人もいます。自社の経営はボロボロなのにボランティア活動にのめり込み続ける社長などもいて、困ったものです。
会社は地域に対しても発言権を持ちえますし、その分、世間体を気にしなければいけなくもなります。つまり、しがらみが多いのです。何か事を起こそうとする時には、これらが障害となることがあり、厄介です。
公共工事をメインとする建築業のように、行政の仕事で食べているところもあります。また、補助金を取ることが命綱になっている会社もあります。このあたりは、都心で仕事をしている方にはイメージしづらい姿かもしれませんが、地方ほどお上に頼ることでどうにかこうにか生き続けているケースは増えます。
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