BW_machida
2021/04/05
BW_machida
2021/04/05
のらりくらりと続けてきたこの連載も今回で終了。ランダムに毎回ひとつの星座を選んできて、最後に登場したのが十二世座のラストを飾る魚座であったのは、必然だったと『星2.0』は魚座とあとがき、あとがきのあとがきを読み終えた今、思う。
個人的には魚座に天体はないが、魚座の守護星である海王星を「ライジングスター」(生まれた時の東の地平線軸・アセンダントと重なっている)に持つ生まれだからか、魚座へのメッセージはダイレクトに心に響いた。いや、心というより魂に届いた感慨さえある。
十二星座一、最も浮世離れしていて(夢の世界の住人だから当然ですが!)、最も空想的で、最もインスピレーションのみで生きていて、最も不思議な生態を持つ人、そして幼い時に夢見ていたことを成人しても、ある意味、大人になりきれずに実際に夢を現実化してしまう人、それが魚座の人たちです。(P344)
自分ではなかなか自覚が持てない部分だったが、上記のようなことを何度も私の資質として伝えられてきたことに、星を学び始めて気がついた。そのようにして、「魚座的性質の自分」をじょじょに自覚をするようになったことは、同時に自分の抱いてきたコンプレックスに向き合うプロセスでもあった。
この連載を何度か読んでいただいた方にはわかるかもしれないが、私は本当に夢見がちで、現実逃避傾向が強い。それは良く働くこともあるが、当然その質により痛い目に遭うこともある。自分の空想が現実よりも本当のことに思えてしまい、強すぎるその思い込みに「現実」から冷や水を浴びせることが時に起きるのだった。そうした”失敗”から、自分を間違った人間と感じ、強烈に自身へダメ出しをするようになり、いつしかそれはコンプレックスとなった。
そんな自分に、上記の言葉は、「ああ、それでいいのか。それが自分なのか!」と涙が出そうなくらいにありがたかった。
人間社会の中では「全ての行動には意味がある」とか、「社会で生きていくためには役に立たなければならない」とか、「理由」とか「意味」とか「大義」のようなものを求める傾向があります。とはいえ、人として生まれただけでもうすでに奇跡。それぞれが存在している、それだけで十分に尊いもの。(P344)
当連載は『星2.0』のレビューのはずが、回を重ねるごとに、パーソナルな自己開示の場となっていってしまった。最後もまた、ものすごく私的なことになるが、私は39歳の時にそれまで続けてきた仕事のいっさいを一度辞めてしまった。急に描き始めた絵と集中的に取り組みたい衝動に抗えず、それこそ妄想が現実を凌駕してしまい、そうした無茶な決断に至った。
それから5年が経ち、当時の衝動の根本にあったものがようやくはっきりとしてきた。その根本理由がそっくりそのまま本に書かれていて驚いた。
「誰かや社会の役に立たなくては大人としてダメだ、人間失格だ」とずっと思い込んできた。でも「役に立てない自分」はいつもいて、その自分の存在をどうしてもなくすことはできないどころか、面倒なことに40代の手前でその社会不適合な自分が爆発してしまったのだった。「誰のなんの役にも立たない自分を許して欲しい!」その声は、もはや叫びのようになり、”まっとうな社会人”からドロップアウトさせてしまったのである。
非社会人的なその後の日々は、解放感と孤独が表裏の日々であった。今もそのどちらもが消えていないが、それまでになかった発想がいつからか生まれ始め、それはしだいに大きくたしかになった。それが、【それぞれが存在している、それだけで十分に尊いもの】という感覚。いや、正直に書くと、「それぞれが存在している」ではなく、あくまでも自分に「生きているだけでいいじゃないか」と思えるようになった。
自分に与えることのできないものを誰かに与えることなどおそらくできない。だからまず、自分に対して「なんの役に立っていなくてもいいよ」と言えることから始めるしかないのかもしれない。
この自己愛が、コップから水があふれるように、いつの日か誰かに「生きているだけでオッケー!」と心の底から言える人になれたらと夢見る。
人間界にも色々な人がいます。(中略)この世はまさに個性の万華鏡でありデパートです。ただ、そうすると当然ですが、今の世の主流・潮流に「合わない・適さない」人たちや、どうしても途中で心や精神が折れる人たちも出てきます。挫折・失敗・ドロップアウト。そういう憂き目に遭遇した人たちは人生の負け組でしょうか? 人の世の澱でしょうか? いえ、彼らは負け組でも穢れでもなんでもなくて、ただ「今の世の中に合わなかった」か、もしくは「適材適所ではなかった」だけなのです。(P346)
皆が異なる光をこの世にもたらしてくれていることで、どれだけこの世が彩り溢れる、豊かな世界になっているのだろうということでした。(P376)
どの星座にももれなく、自分のことと感じられる箇所があった。それから、友人、知人、家族など、誰かしらの顔が必ず浮かんだ。あの人のことを書いているのでは? とニヤニヤしながら読んだ星座もある。その度に思ったのは、この世界のユニークさであった。
「色々な人がいる。今の世の中に合わない、適さない人もいる。でも、どの人もみんな、それぞれの光をこの世にもたらしている尊き存在なのだ」
『星2.0』を最後まで読み終えた今、私の心にはそのような想いが振動している。
どの星座も、魅力的である。その十二星座に散りばめられた魅力、才能は、十二星座という宇宙を内包する私たちの中にすべてあるのだと思う。だから、この『星2.0』は自分のことがぎっしりと書かれた本なのだ。
この本は、いつもあなたのそばで、いつまでもあなたを支えます。
帯に書かれたこの言葉とは、言い換えると「星々はいつもあなたのそばで、いつまでもあなたを支えます」ということ。心強いこの本を手に、意気揚々と生きていかれたらと思う。そうして、私たちみんなで「輝く星」となり、輝く世界をともに創造しけたらと願う。
『星 2.0』光文社
yuji /著
文・絵/野村浩平 友人の“遊びの鑑定”を受けたことにより星に興味を持つ。2018年に占星術の基礎講座を受講し、以後マイペースに独学中。太陽星座はふたご座。星のことや身辺雑記を綴るブログ「leeの話」
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