「自分は臭う」と感じたら、生活習慣を見直せ!
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におう=オヤジ化と捉えよ……酸化、老化、がん化の原因

 

よほど体や服を洗っていない子の場合を除いて、体臭の強い赤ちゃんや子どもには、出会うことはない。体臭は、30代くらいから、年齢を反映したにおいに変化し、「キツい」と感じられるようになる。

 

体質的な腋臭(わきが)は別にして、多くの体臭は、生活習慣の乱れや、生活習慣病による加齢現象の結果なのだ。「におう=オヤジ化」と捉えて、自分のライフスタイルを見直してみよう。

 

 

においを発生させやすいライフスタイルには、次のようなものがある。

 

1. 早食い、胃が悪い。
2. 野菜や海藻、果物などの食物繊維が不足しがちだ。
3. 便秘をしやすい。
4. 肉食が多い。
5. アルコールをよく飲む、肝機能が悪い。
6. 糖尿病やメタボリックシンドロームがある。
7. 中性脂肪が高い。
8. 汗をかく習慣がない。
9. ストレスが多い、生活時間が乱れている。
10. 慢性的に疲れている。

 

いずれも健康へのリスクであるが、シニア層であれば、何かしら当てはまるのではないだろうか。

 

1~4では、消化不良が原因で、腸内環境の悪化を起こし、腸の中で、食物(主にタンパク質)の腐敗に伴う代謝物=におい分子が生成されている。

 

体臭から、「腐った卵」「腐った玉ねぎ」「腐った魚」「アンモニア」の臭いなどがしたら、要注意だ。そのにおい分子は有毒物質であり、体を酸化させ、老化やがん化の原因になる物質でもある。便やおならが臭いのは、腸内で有毒物質が産生されている証拠である。

 

肝機能の低下も体臭となって表れる

 

腸内で発生したにおい分子は、小腸から吸収され、肝臓で無害化、無臭化される。ところが、5のような、肝機能を低下させる要素があると、そのにおい分子を肝臓で解毒できなくなる。血液中にあふれたにおい分子は、血流に乗って体をめぐり、呼気を通して口臭に、汗を通して体臭になって表れるのだ。

 

6の糖尿病やメタボリックシンドロームの人は、脂肪肝を伴うことが多いので、肝機能の低下からにおい分子を解毒しにくくなる。生活習慣病の外来にいらっしゃる皆様は、たいてい、におっている。診察は、半閉鎖空間で行なわれ、距離も近いので、体臭がわかりやすいのだ。

 

さらに、血糖コントロールがかなり悪く、尿にケトン体が出ている場合には、ケトン臭という独特の甘酸っぱいにおいがするようになる。このにおいは、別に不快なにおいではない。

 

細胞内で糖をエネルギーとして利用できず、脂肪を分解してエネルギーとして利用しなければならなくなると、肝臓でケトン体が作られるようになる。糖尿病の人で、尿にケトン体が出ると「ケトーシス」と呼ばれ、主治医に発見されると不摂生を叱られることになる。もっとひどくなって体が酸性に傾くと「ケトアシドーシス」と呼ばれ、測定器で血糖値が振りきれるほど高血糖となり、昏睡から救急車で運ばれることもあるほど危機的な状態になる。

 

糖質制限によるケトン臭

 

しかし、最近、ケトン臭を褒められる場合がある。トレーニング系の雑誌などで「ケトン体」の文字を目にしたことはないだろうか。パーソナルトレーニングジムなどで取り入れている、厳格な糖質制限ダイエットやケトン食ダイエットなどでは、あえて糖質を遮断して、ミトコンドリアを活性化し、脂質をエネルギーとして燃焼できるような代謝にスイッチすることを目的としている。

 

そのため、尿にケトン体が出れば、「しっかり実践できていますね!」と褒められることになるのだ。

 

糖質制限は、最近ブームになっているが、日本の糖尿病学会は、これをいまだに「勧めない」としている。しかし、イギリスの糖尿病学会は2011年に、アメリカの糖尿病学会は2013年に、糖質制限食を糖尿病の治療食として一部認めている。

 

ケトン食は、糖質制限の中でも、かなり厳格に糖質を制限するものだ。元々、重度のてんかんの治療食として用いられていたもので、最近では、がんの治療食としての利用も研究されている。2015年には、権威ある医学雑誌『ネイチャー・メディスン』に、「ケトン体が炎症を抑制する」という論文も報告されている。

 

糖質制限のグループの中でも、厳格な方法から緩い方法まで流派が分かれている。糖質・脂質・タンパク質の理想的な比率を示す科学的根拠は、現状のところはない。長期的な効果についての研究は、これからである。

 

企業と共同で低糖質の食品開発をさまざま行なっている北里大学北里研究所病院の山田悟糖尿病センター長は、「糖質制限食の方法やガイドラインを作る必要がある」と話している。

 

理想の食の見つけ方――体臭を指標にする

 

糖質制限食で注意したいことがある。糖質を減らす分、タンパク質と脂質の摂取を増やさなければならないということである。消化酵素の分泌が追いつかないと、タンパク質が不消化になり、腸内で有害物質であるにおい分子が発生しやすくなる。

 

また、腸内細菌の種類によっても、理想的な食事の割合は変わってくる。人の腸内細菌のバランスは千差万別で、細菌の種類によって、餌にする食事も異なっている。

 

また、穀物を減らすと食物繊維も減ってしまう。その分、野菜や海藻類などで食物繊維をしっかり摂取しなければ、腸内環境が悪化して、においの原因になる。自己流で、「炭水化物さえ抜けば、肉は無制限に食べていい」と都合のいい解釈をしてしまう人は多いが、むしろ、腸内環境も代謝も悪化させ、不健康と悪臭の原因になるので注意したい。

 

自分の消化・代謝などの体質、それに腸内細菌のタイプによって、理想の食事のバランスは違うとしか言いようがない。全員個性があるのに、全員に当てはまる健康食を見つけようと思うのが、そもそもの間違いだと思う。100人いたら100通りの理想の食事があるはずだ。

 

自分に合う食事を見つける簡単な方法として、においを指標にしてみてはどうだろう。

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