BW_machida
2021/09/26
BW_machida
2021/09/26
そもそも、担当編集者の私が風海さんを知ったきっかけは、今年の1月11日にオンエアされたJ-WAVEの特別番組「20 VOICES 20 TUNES」内のコーナー「すごい『20歳』をピックアップ」。「地球人離れしたすごい20歳! 夢は人類初の火星人になること!?」というテーマでインタビューに答えていたその内容のスケール感に、「この人、何言っちゃってんだ!?」と衝撃を受けました。
「こんなスゴい人だから、きっとよその出版社が既に唾をつけているだろう」とダメ元で企画書を送ったところ、何と快いお返事が!!!!!!! この先も私の人生で嬉しかったことBEST3に入り続けると思います。
学業もあってお忙しいので、出版は年内くらいかな?と見込んでいたのですが、初めての打ち合わせで、「9月に出せないでしょうか?」と相談されました。理由を聞くと、「がんと闘病中のおじいさんを励ますために、誕生日がある9月に本をプレゼントしたくて」。今日は4月2日(金)です。ここから約数か月、風海さんの“怒涛の毎週締切りライフ”が始まりました。
この本のテーマは、「サルでもわかる、目から鱗のエコな地球の救い方」。イラストをふんだんに使い、老若男女問わず、文字だらけの本にアレルギーがある人にも手に取ってもらえることを目指しました。風海さんの考えや研究を十二分に理解し、かつ風海さんが納得のいくイラストを描けるイラストレーターさんを大至急探さねば……。「母が描いてくれるかもしれません。イラストを描くのが好きで」。最適任者はお母さまということで即決しました。
風海さんの原稿が来る→私がコンテを描く→お母さまがイラストを描くという流れで、少しずつ山の頂上が見えてきました。化学に疎すぎて私がコンテで詳細を詰め切れなかったところもイラストラフには明快に描かれていて、それは風海さんとお母さまが私からは見えないところでやりとりをしてくださったお陰以外の何物でもありません。まさに強力な親子のタッグの結晶です。
春が過ぎ、夏が終わり、おじいさまの誕生日のちょうど1週間前に見本が完成。傘寿のお誕生日の前日に家族で開いたバースデーパーティで、風海さんはおじいさまに直接、本を手渡しました。おじいさまは嬉しさのあまり言葉に詰まってしまい、誕生日会の後にそっとひとりでリビングに移動して読んでいたそう。おそらくひとりで涙していたのでは――。
私事で恐縮ですが、実は私の父が5月におじいさまと同じ病気で他界し、この本を出すことは私にとっても仇討ちになる旨、お母さまにはメールでお伝えしていました。お母さまは私のメールに涙を流してくださり、精一杯頑張りますと仰ってくださいました。
本が完成するまでの数か月間、おじいさまの病状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、私としてはゲラでもいいからお見せした方がいいのではないかと、お母さまにお伝えしたこともあったのですが、風海さんに「本になってから渡す」という強い意向があるとのことで静観していました。誕生日前におじいさまにお見せするかどうかの判断はご家族に委ね、もう見本ができる一歩手前というところで、本文や表紙や帯など最終段階の本のパーツをお送りしました。ご家族は表紙と帯だけおじいさまに見せたそうで、おじいさまは何度も表紙の手触りを確認して、「早く本を読みたいなぁー!」と仰ったそうです。
「おじいさんがくれた『宇宙への秘密の鍵』という本がきっかけで僕の火星への道が拓けた。だから僕も本で祖父に恩返ししたい」(風海さん)。
「誰よりも風海を可愛がってくれて、風海が火星に行きたいと思うきっかけの本をくれた人なので、本でお返しが出来れば息子も私もとても嬉しいです」(お母さま)。
この本は、風海さんとお母さまの夢を叶えた物語でもあります。そして、おじいさまの次の夢は、「かずの本が本屋さんに並んでるところを見に行きたい!」。本の発売日は9月24日(金)。もしかしたらこの願いも既に叶えてしまったかもしれません。おじいさま、いつまでもお元気で!
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