夏休みに子どもと一緒に「考える力」を身に着けるのピッタリの一冊
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ryomiyagi

2022/07/21

 

これまでの人生で「仕事をやめたい」と発作的に思ったことが何度かあった。だけど考えているうちに深刻になりすぎた結果うんざりして考えることをやめたり、「なんとかなるさ」と根拠なき楽観にすがったりしているうちに、いつの間にか大して稼げない「そこそこ」のポジションに落ち着いてしまった。自分には考え抜く力が欠けていたと気がついたのは、この本の構成を担当したからだ。

 

今、子どもたちには「考え抜く力」が求められている。変化の激しい社会に対応すべく学校でも「自分で考える」系の課題が増えているという。
しかし、そもそもどうやって考えればいいのかと戸惑う子どもも多い。子どもに相談された親も「それは自分で考えるしかないね」と逃げてしまいがちだ。それでは子どもだけでなく大人も「考え抜く力」は身につかない。
そんな時、手にして欲しいのが本書だ。

 

著者の齋藤孝さんは、「考える力は誰もがもっている」と断言する。やり方さえ覚えれば簡単にできるというのだ。斎藤さんがお手本にしたのは哲学者のデカルト。彼の「われ思うゆえにわれあり」は聞いたことがあるだろう。
斎藤さんは、デカルトの著書『方法序説』をもとに子どもたちにわかりやすく「考える」方法を解説する。

 

まず挙げるのは、4つのルールだ。
「決めつけない」
「小さく分けよう」
「簡単なことから始めよう」
「見直しをしよう」
自分で考えることに困った時には、このルールを思い出せばほとんどの問題は解決する。途中で投げ出さずに最後まで考えることができるのだ。

 

たとえば、地球温暖化について。
「決めつけない」とは、思い込みで判断しないということ。地球温暖化はそもそもいけないことなのかを調べてみると、地球はこれまでずっと寒い時期と暖かい時期を繰り返していることがわかる。
「小さく分けよう」とは、全体を考えるのではなく時間や場所などに区切ること。地球温暖化で陸と海、都市部と田園地帯などに分ければ、どんな問題があるのか具体的に考えやすくなる。
「簡単なことから始めよう」とは、考えているだけではなく行動しようということ。地球温暖化による悪影響を避けるために自分は何ができるのか。
「見直しをしよう」は、別の視点で考えてみること。最近になって地球温暖化が問題視されるようになったのはなぜなのかを調べてみると、新たな発見があるかもしれない。
こんなふうにルールをもとに考えれば、「考え抜く」ことができることがわかっていただけるだろうか。

 

本書では17のSDGs(持続可能な開発目標)のうち5つを取り上げて解説しているから、夏休みの課題に悩む子どもたちとその保護者の参考になる。

そして本書は、実は子ども向けに見えて、大人の悩みにも活かせる内容だ。「幸福に生きるためのルール」は、「習い事をやめたい」「自分には何が向いているんだろう?」という子どもの悩みだけでなく、大人にとっても参考になる。うまく活用すれば、私のように悩んだ挙句に何の実りも得られないということにはならないだろう。

 

斎藤さんの持論は「頭は刀と同じで、使い方を覚えればうまく使えるようになる」
本書で、子どもも大人も頭の使い方をマスターすれば、課題解決能力がアップすること間違いなし。

 

思考の達人デカルトに学ぶむずかしい問題を考え抜く力
齋藤孝/著

 

今泉愛子
1965年兵庫県生まれ。ライター。インタビューや書評、書籍の構成を手がける。これまで担当した書籍は、新谷学『獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論』(光文社)、出口治明『教養は児童書で学べ』(光文社)など。ランナーとしてマスターズ世界陸上にも出場。

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