ryomiyagi
2020/05/04
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2020/05/04
本稿は、大黒達也『芸術的創造は脳のどこから産まれるか?』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
子供たちの創造的思考力を高めるためには、創造性を支える知的特性や態度特性を伸ばすように働きかけ、創造性を妨げる要因をできるだけ排除する必要があります。
また、歳をとるにつれて様々なことを理解し、あらゆる問題に対する“最適”な解決法を会得することで、直観的思考よりも論理的思考が強くなり、創造的な答えが見つけみくくなっていきます。
成人になっても直観的思考を維持していくために意識改革を行うことも、創造力を高めるために非常に重要です。
その方法の一つとして、自分の思考をモニターしたり(思考の自己観察)、自分でコントロールしたり(思考の自己制御)することが挙げられます。
思考の自己観察の例としては、グラハム・ワラスの創造性が生まれる4段階(「暇や退屈は脳の「あたため期」になっている 科学が証明する、“ぼーっとする時間”の必要性」参照)のうち今の自分はどの段階にいるのかを客観評価することや、自分が固定観念にとらわれていないかといったメタ認知的なモニタリングが考えられます。
また、思考の自己制御の例としては、「もっと違う観点から問題を捉え直してみよう」とか、「一度この問題から離れて、他のことを考えてみよう」といった思考の習慣を身につけることで、創造力は飛躍的に増大するでしょう。
このように、創造性が生まれる4段階のような知識があれば、現在自分がどの段階にあるのかを知り、意識的に次の段階に進んだり微調整したりすることも可能になります。また、創造性を高める教育法・訓練法として、他にも様々な手法が提案されています。次節では、その一部を紹介します。
アメリカの実業家オズボーンによって開発された方法で、最も有名なものの一つといえます。はじめに、ある議題に対して自由奔放にアイデアを沢山出していきます。ここでは、提案されたアイデアに対する一切の批判を禁じます。アイデアがたくさん出てくれば、それに伴って良質のアイデアも増えてきます。
そしてアイデアが出尽くしたところで、次に評価の段階に移ります。ここでは、実際に使えそうなアイデアを少しずつ絞り込んでいきます。このブレインストーミング法をまとめた本はマサチューセッツ工科大学のテキストとしても採用されており、創造性教育のパイオニアといえるでしょう。
文化人類学者の川喜田二郎によって開発された方法です。この方法は元々、文化人類学研究で膨大な質的データから考えを導くための手法でした。まず、ある議題に対して考えを1つずつ、同じサイズの小さな紙片(ラベル)に書き込みます。次に、このラベルを何かしらの共通点からグループ分けします。そして、大きな紙にグループ化したラベルを張り込みラベル同士の関係を示します。
この手法の目的は、混沌とした状態にあるバラバラの考えをラベルによって目に見える形にすることで、グループとして体系化させていきながら考えを整理していくことです。
中山正和氏によって開発された手法です。この方法は元々、製品開発のために用いられる手法でした。簡単に説明すると「類似するもの」から連想を繰り返していくといった方法です。また、どんな問題も解決のヒントは既に自然界に存在しているという考えが基盤にあります。例えば、新幹線の形状はカモノハシがヒントになっています。缶ジュースのプルタブもこのNM法を基に考案されたといわれています。
具体的な手順を説明するため、ここでは「誰にも見つからない家」を開発したいとしましょう。ここから連想できるキーワードを発想します。例えば、「他人にみられてもそれが何なのかバレないもの」などです。そして、そのキーワードに似た成功例を探します。例えば、身体の色が自由自在に変化する「カメレオン」などでしょうか。
そして、その成功例の本質を考えます。例えば、「自然界の周りの色と同調することで存在を消すことができる」などです。そうやって最終的には、「周辺の背景と同じ模様をした家」にたどり着くことができるようになります。
この手法では、なるべく概念的に遠く離れたもの同士を結びつけることにより独創的な発想となります。
ブレインストーミング法、KJ法、NM法などの技法から創造的思考の手法を一般化した場合、次のプロセスが浮かび上がってきます。
(1)まずはアイデアをなるべく沢山絞り出す(ここではアイデアの評価はあと回しにする)
(2)アイデア同士の類似性を見つけてグループ化する
(3)既に知っているものとアイデアの類似性を活用して、連想する
(4)絞り出したアイデアを精査し、まとめる
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