「ゴミを出す生きもの」が、それでも地球を守るための一冊|フィリップ・バンティング『きみの地球を守って』
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ryomiyagi

2022/07/26

 

絵本と侮るなかれ。本書は人間が排出したゴミがどのように環境に負荷をかけているか、地球を守るためのリサイクルやリユース方法などを具体的に紹介してくれる。子どもだけでなく、大人にとっても学びの多い一冊なのである。

 

「最初に知ってほしいのは、自然界にはゴミなんてないってこと。ゼロ。なし。1つもない。」

 

その理由は単純明快だ。地球から自然に生まれたものは、ゆっくりと分解され、粉々になり、やがて土へと還り、べつの使われ方をするからだ。命はこうして巡ってゆく。だから「植物にもプランクトンにも人間にも鸚鵡にも、むだなところなんてまったくない」のである。

 

ゴミ問題は人間を含む、地球上のあらゆる生物にとっても重要な問題だ。私たちの家から出るゴミは埋め立て地に運ばれた後、ゆっくりと分解されていくわけだが、そのためにかかる時間はそれぞれだ。リンゴの芯なら2ヶ月、空き缶は50年、アルミ缶は200年。プラスチックのフォークは、なんと1000年もの時間がかかる。それを上回るのが、ガラスの瓶だ。私たちの日常生活にすっかり溶け込んでいるガラスの瓶だが、分解されるまでに100万年もかかるのだ。

 

80億人もの人間が住んでいる地球でゴミを無くすために私たちに何ができるだろう。その解決策として、本書は地球を守るための5つの方法を提案する。すなわちリデュース、リユース、リサイクル、リニューアルそして「リアルに取り組む」ことである。

 

「何かについて、このままではまずいなって強く感じることがあったら、自分が思ったことを伝えるために、行動してみよう。」

 

自治体の清掃活動に参加してみたり、身近な人たちと環境問題について話したり、デモに参加するのもいい。人への贈り物に植物や木を選ぶのも、取り組みのひとつになる。自分が正しいと思ったことを実際に行動し、地球を守るための活動に積極的に参加すること。それが地球を守ることに繋がるのだと、著者は説明する。

 

「きみも、わたしも、きみの家族も、きみの友だちもみんな(そう、あばれんぼうのあの子だって)、今、地球というこの小さな美しい星を守ることをまかされているんだ。」

 

原題は『Your planet needs you!』。絵本作家のフィリップ・バンティングはオーストラリア在住で、著書は世界30ヵ国以上で出版されている。楽しいイラストと分かりやすい説明もさることながら、本書で紹介される実践的なアイデアは、子どものSDGs入門書としてもおすすめだ。

 


『きみの地球を守って』
フィリップ・バンティング/著

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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